歯科医学
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咀嚼能力および咬合力と顎顔面形態との関連について
永田 雄己井上 美香蓮舎 寛樹長屋 和也神原 敏之
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2007 年 70 巻 3_4 号 p. 193-203

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抄録

顎顔面や歯列の形態と咀嚼能力や咬合力との間には密接な関連がある.しかし,実際の矯正臨床において,治療計画の立案や治療成績を評価する上で咀嚼能力を評価項目として用いることは少ない.本研究では,咀嚼機能の高さがどのような形態的要因と関連するのかを検証するため,咀嚼能力および咬合力と顎顔面形態および歯列形態との関連を解析した.
  成人50名を被験者とし,咀嚼能力判定用の色変わりチューインガムで各被験者の咀嚼能力値を得た.さらにデンタルプレスケールを用いて咬合力を測定し,これら2つのパラメーターと各被験者の頭部X線規格写真の分析値および歯列模型計測値との相関を調べた.
  その結果,男女ともに咀嚼能力と咬合力との間に正の相関が認められた.男子では咬合力とSNAとの間に正の相関が,咬合力とMandibular plane to SN,Gonial angle,OM angleとの間に負の相関が認められた.また,女子では咀嚼能力とAngle of convexity,Speeカーブ量との間に正の相関が,咀嚼能力とA-B plane angleとの間に負の相関が認められ,咬合力とSNA,A'-Pt',上顎のDental arch width(3-3),上顎のDental arch length,Speeカーブ量との間に正の相関が,咬合力とMandibular plane to SN,Mandibular plane to FH plane,Occlusal plane to FH planeとの間に負の相関が認められた.
  以上の結果より,女子においては,咀嚼能力はA点の前後的な位置とSpeeカーブ量に関係しており,咬合力はそれらに加え下顎下縁の角度や,上顎歯列形態も関連がある可能性が示唆された.男子においては,咬合力はA点の前後的な位置や下顎骨形態と関係がある可能性が示唆された.

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© 2007 大阪歯科学会
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