歯科医学
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70 巻, 3_4 号
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  • 永田 雄己, 井上 美香, 蓮舎 寛樹, 長屋 和也, 神原 敏之
    原稿種別: 本文
    2007 年 70 巻 3_4 号 p. 193-203
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー
    顎顔面や歯列の形態と咀嚼能力や咬合力との間には密接な関連がある.しかし,実際の矯正臨床において,治療計画の立案や治療成績を評価する上で咀嚼能力を評価項目として用いることは少ない.本研究では,咀嚼機能の高さがどのような形態的要因と関連するのかを検証するため,咀嚼能力および咬合力と顎顔面形態および歯列形態との関連を解析した.
      成人50名を被験者とし,咀嚼能力判定用の色変わりチューインガムで各被験者の咀嚼能力値を得た.さらにデンタルプレスケールを用いて咬合力を測定し,これら2つのパラメーターと各被験者の頭部X線規格写真の分析値および歯列模型計測値との相関を調べた.
      その結果,男女ともに咀嚼能力と咬合力との間に正の相関が認められた.男子では咬合力とSNAとの間に正の相関が,咬合力とMandibular plane to SN,Gonial angle,OM angleとの間に負の相関が認められた.また,女子では咀嚼能力とAngle of convexity,Speeカーブ量との間に正の相関が,咀嚼能力とA-B plane angleとの間に負の相関が認められ,咬合力とSNA,A'-Pt',上顎のDental arch width(3-3),上顎のDental arch length,Speeカーブ量との間に正の相関が,咬合力とMandibular plane to SN,Mandibular plane to FH plane,Occlusal plane to FH planeとの間に負の相関が認められた.
      以上の結果より,女子においては,咀嚼能力はA点の前後的な位置とSpeeカーブ量に関係しており,咬合力はそれらに加え下顎下縁の角度や,上顎歯列形態も関連がある可能性が示唆された.男子においては,咬合力はA点の前後的な位置や下顎骨形態と関係がある可能性が示唆された.
  • 神原 正樹, 日吉 紀子, 川崎 弘二, 上村 参生, 三宅 達郎, 土居 貴士, 上根 昌子, 安達 郁, 吉田 邦晃, 田中 浩二, 河 ...
    原稿種別: 本文
    2007 年 70 巻 3_4 号 p. 204-211
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー
    本研究は,光学的診査機器を用いて歯垢の観察を行い,赤色蛍光を発する歯垢が観察される部位やその蛍光強度が,歯周組織状態や歯垢中の菌叢とどのように関連しているかを検討することで,光学的診査技術が歯垢の質的評価に応用可能であるかを検索する目的で行った.
      被験者は歯周治療科に来院した患者で実験参加に同意の得られた11名とした.赤色蛍光を発する歯垢の付着部位の観察にはペンスコープを用い,蛍光を発する歯垢が認められた歯面の割合を算出した.またそのうちの1歯をInspektor Pro™を用いて撮影し,画像解析を行って平均蛍光強度(ΔR Average)と最大蛍光強度(ΔR Max)を算出した.歯周組織状態はPeriodontal Index (PI),ポケット深さ(6点法)で評価し,Inspektor Pro™の対象歯はアタッチメントロス,プロービング後の出血についても診査して,歯肉縁上歯垢と歯肉縁下歯垢を採取,PCRインベーダー法によって口腔内総菌数およびActinobacillus actinomy-cetemcomitance,Porphyromonas gingivalis,Prevotella intermedia,Tannerella forsythensis,Treponema denticola (T. denticola),Fusobacterium nucleatumの検査を行い,口腔内総菌数に対する各歯周病関連菌の割合を算出した.
      蛍光を発する歯垢の付着部位と歯周組織状態との関連を検討したところ,蛍光の有無と歯周組織状態とには直接的な関連は認められなかったが,蛍光強度と歯周病原細菌との関連では,古い歯垢で多くなるといわれているT. denticolaとの関連が認められ,光学的診査技術が歯垢の成熟度や病原性の診断へ応用できる可能性が示された.
  • 福岡 哲郎, 辻林 徹, 柿本 和俊, 亀水 忠宗, 岡崎 定司, 豊田 紘一, 小正 裕
    原稿種別: 本文
    2007 年 70 巻 3_4 号 p. 212-221
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー
    臨床でEr:YAGレーザーを用いて歯を切削するとき,外部から注水しながら行うのが通例である.それは,切削効率が向上するためであるが,その役割については議論がある.歯の硬組織にもともと水分子が含まれていることがその混乱の一因である.そこで,ヒドロキシアパタイト(HAP)およびフルオロアパタイト(FAP)で作製した多孔質セラミックスをレーザーで切削するときの水分子の役割を調べた.実験に用いる試料はレーザー照射前に水に浸し,空隙が水で満たされるようにした.切削に対する水分子の寄与について,試料内部の水分子による効果と外部のものによる効果を区別するために,通常の水(軽水)と重水を使用した.レーザー照射は軽水,重水あるいは大気中にて行った.HAPの切削効率を最も大きく左右する要因は,試料の内部に含まれている水であった.内部に水分子が存在しないとき,外側の水分子によって切削効果が,向上することがわかった.HAPとFAPの切削痕の形状は大きく異なるので,HAPの水酸基が切削に寄与していると考えられる.
大阪歯科学会例会抄録
大阪歯科学会大会大阪歯科大学同窓会学術研修会抄録,プレ大阪歯科大学創立100周年記念事業
博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
  • 中辻 勇志
    原稿種別: 本文
    2007 年 70 巻 3_4 号 p. A1-A2
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー
    インプラント体の表面は,インプラント槽骨との接触率の増加あるいは骨形成を期待して,種々の材料や方法で加工されてきた.しかし,骨形成は,インプラント体の形態や非機能下・機能下の条件によって異なっている.そこで,本研究では,インプラント体が同一形態および機能下の条件下で,表面処理が異なる粗面と滑面のインプラント体を用い,両インプラント体周囲の骨占有率および骨形成や骨吸収に関与する血管の占有率の経時的変化を調査し,どちらのインプラント体が周囲に骨を長期に維持していたかを明らかにすることを目的とした.実験動物には,咬合様式がヒトに近似した力ニクイザル3頭を用いた.インプラント体には,スクリュー型の同一形態で表面形状の異なる2種類のチタン製インプラント体〔ブラスト処理して表面を粗くしたインプラント体(以下,BIとする)と機械削り出し加工のみで表面が滑沢なインプラント体(以下,MIとする)〕を用いた.これらインプラント体それぞれを下顎の第二小臼歯部と第一大臼歯部に植立し,両インプラント体を14週非機能下においた後,14週非機能下においただけの条件(以下,機能後0週とする)の部位および引き続き金銀パラジウム合金製の上部構造(金属冠)を装着して,1週,4週,12週,24週にわたり機能下においた条件の部位を設けた.実験動物を安楽死させた後,アクリル樹脂微細血管注入法によって,機能後0週,1週,4週,12週,24週の縦断されたインプラント体およびその周囲の微細血管鋳型・骨同一同時標本を作製した.これら各標本を走査電子顕微鏡で観察および連続写真撮影し,写真を合成した.合成断面画像で,インプラント体表面から500μm外周の領域内で,骨断面および血管をトレースし,それぞれの面積を画像解析して,骨占有率および血管占有率を算出した.これらの値の変化からインプラント体周囲骨および血管構築を量的に評価した.機能後0,1,4,12,24週の骨占有率は,BIでは63.8%,62.1%,62.1%,70.3%,46.4%,MIでは69.4%,74.7%,76.1%,71.9%,55.2%であった.機能後0週から12週まで,MIの骨占有率はBIより高かった.この期間,MIの骨占有率は変化しなかったのに対し,BIの骨占有率は0週から4週まで変化せず,4週から12週まで増加した.BIおよびMIの骨占有率は12週で同じとなった.この機能後12週を境にして24週まで,BIおよびMIの骨占有率はともに減少したがBIで-23.9%,MIで-16.7%と,骨占有率の減少はBIの方が大きかった.機能後0,1,4,12,24週の血管占有率は,BIでは4.3%,4.3%,4.1%,5.9%,6.5%,MIでは4.9%,4.7%,4.4%,7.5%,7.4%であった.機能後0週から4週まで,MIの血管占有率はBIよりわずかに高かった.この期間,MIおよびBIの血管占有率は変化しなかった.機能後4週から12週までMIおよびBIの血管占有率はともに増加したが,MIの血管占有率の増加はBIより大きかった.機能後12週から24週まで,MIの血管占有率は機能後4週から12週までに増加した状態を維持して変化せず,BIの血管占有率は増加したが,MIの血管占有率はBIより高かった.以上のことから,MIはBIに比べ,インプラント体周囲に骨が長期に維持されたと考えられた.インプラント体の表面形状と関係なく,骨が形成あるいは吸収される時には微細血管は多く,骨が形成も吸収もされない時には微細血管は増加も減少もしないことが示唆された.
  • 田治米 元信
    原稿種別: 本文
    2007 年 70 巻 3_4 号 p. A3-A4
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー
    エナメル質試料に対し,異なる局所的フッ化物応用を試みた上で,各種濃度の糖タンパク質を介在させた環境における経時的な脱灰過程のモニタリングを行うことにより,脱灰抑制に影響を及ぼすフッ化物応用の種類および糖タンパク質の濃度についてin vitro環境下で検討した.ウシ鏡面研磨エナメル質を,ムチン非添加および3種類の異なる濃度(0.29,0.87,2.70mg/mL)になるようにムチンを添加した脱灰溶液に浸漬した.各ムチン濃度におけるエナメル質試料は,脱灰溶液のみに浸漬した対照群,1日3回フッ化物配合歯磨剤溶液に5分間浸漬したフッ化物配合歯磨剤群,実験開始前にAPFゲルを5分間作用させたAPF群に分けてフッ化物応用を行った.エナメル質試料の脱灰程度は24,48,72,96時間目にQLF法によって解析して評価を行った.その結果,対照群ではムチンが存在することによって脱灰が抑制されることが分かり,0.87mg/mLまでの濃度でムチンが脱灰溶液中に存在すれば,脱灰を抑制する機能が発揮されていることが明らかとなったが,ムチンのみでは完全に脱灰を抑制することはできないことも同時に明らかとなった.また,APFの応用は高い脱灰抑制効果を導くことが明らかとなり,いずれの群においてもほとんど脱灰が認められなかった.さらに,口腔内に低濃度であってもムチンが存在すれば,低濃度のフッ化物の持続的な応用であったとしても,脱灰は高度に抑制されることも明らかとなった.初期う蝕の再石灰化には持続的な低濃度のフッ化物応用を行なうべきであると考えられているが,QLF法を応用し,個々の歯面における初期う蝕のあり/なし,および脱灰程度を診断したうえで,フッ化物局所応用プログラムの策定を行なうことが口腔内の健康の実現のために効果的である可能性が示唆された.
  • 中矢 健二
    原稿種別: 本文
    2007 年 70 巻 3_4 号 p. A4-A5
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー
    本研究では,成人における口腔保健状態の世代間格差の有無を明らかにするため,某事業所における成人の口腔保健状態の年次推移を把握するとともに,その口腔保健状態を出生年度別に比較した.対象者は,歯科診療所を併設する某事業所において継続実施した歯科健診事業を,1994〜2006年の間に受診した男性1,119名(34.8±11.0歳),女性2,154名(28.5±8.7歳),合計3,273名(30.6±10.0歳)であった.なお,データは,歯科健診事業の介入効果の影響がない初回受診時のみの結果を用いた.口腔保健状態の評価は,歯の状況としてDMFT歯数,歯周組織の状況としてCPIコード0のセクスタント数,口腔内の総合的健康指標として口腔年齢を用い,受診年度別および出生年度別に解析した.統計解析方法としては,受診年度間の各指標の比較は,一元分散分析を行った後,Tukeyの多重比較を行い,また,出生年度間の各指標の比較は,unpaired t-testによって行った.受診年度別の解析の結果,1994〜2006年の間,DMFT指数は,20歳代では有意に減少したが,30歳代,40歳代および50歳代では変化が認められなかった.一方,CPIコード0のセクスタント数は,年度による変動が大きいものの,20〜50歳代のいずれの年齢階級においても有意に増加し,13年間,歯周組織は良化していた.さらに,口腔年齢は,20歳代では有意に減少したが,30歳代,40歳代および50歳代では,年度による増減が大きく,一定の傾向を示さなかった.このように,1994〜2006年の間,成人の口腔保健状態は,とくに若い年齢階級において,良化していることがわかった.次に,出生年度別の解析の結果,DMFT指数は,1975年以降に生まれた世代のほうが,1974年以前生まれた世代に比べて,有意に少なく,これらの世代間に格差が生じていることがわかった.一方,CPIコード0のセクスタント数は,1949年以前に生まれた世代<1950〜1974年に生まれた世代<1975年以降に生まれた世代,の順に有意に多くなり,これらの3つの世代間に格差が生じていることがわかった.さらに,口腔年齢は,1975年以降に生まれた世代のほうが,1974年以前に生まれた世代に比べて,有意に低く,これらの世代間に格差が生じていることがわかった.以上の結果から,成人の口腔保健状態は,1949年以前に生まれた世代,1950〜1974年に生まれた世代および1975年以降に生まれた世代の3つの世代間において格差が存在し,その中でも,とくに1975年以降に生まれた世代は,その他の世代と比較して健康であることがわかった.このことは,わが国における今後の口腔保健活動が,従来のようなう蝕や歯周疾患の高リスク集団への対策ではなく,低リスク集団に対してのアプローチが必要なことを示しており,フッ化物の応用やブラッシング指導といった歯科だけの予防対策だけでなく,全身の健康と関連性をもつhealth related factorへのアプローチも視野に入れた口腔保健対策システムの構築が急務であることが示唆された.
  • 松浦 修
    原稿種別: 本文
    2007 年 70 巻 3_4 号 p. A6-A7
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー
    我々はこれまでに,臨床分離のPrevotella intermedia(P. intermedia)のなかに,菌体外多糖(exopolysaccharide: EPS)を多量に産生して単独でバイオフィルムを形成する株が存在することを明らかにしてきた.また,バイオフィルムを形成するP. intermediaのマウスにおける膿瘍形成誘導能は,非形成株と比較すると100〜1,000倍強いことや,EPS産生に関わる遺伝子発現についても報告してきた。EPS産生性獲得に伴うバイオフィルム形成性は,口腔常在菌であるP. intermediaの病原性を決定する重要な因子であると考えられるが,膿瘍形成誘導との直接的な繋がりについてはいまだ不明である.そこで今回,当研究室で辺縁性歯周炎病巣より分離した,P. intermedia strain OD 1-16より分離精製したEPSを用いて,これがヒト貪食細胞に与える影響について検討を試みた.貪食試験には,ヒト単球系細胞であるTHP-1細胞と直径2.0μmのラテックスビーズを用いた.オプソニン化したラテックスビーズを0.5〜2.0mg/mL濃度のEPSでコートし,THP-1細胞の貪食に与える影響を透過型電子顕微鏡にて観察した.THP-1細胞をEPSコート/非コートラテックスビーズと共培養したのち,RNAを回収し,純度を確認後,マイクロアレイにアプライし,遺伝子発現の差を検討した.精製したEPSでコートしたラテックスビーズを走査型電子顕微鏡観察し,OD 1-16のバイオフィルムに特徴的な菌体間の網目状構造がラテックスビーズ間にも再現されることを確認した.これをTHP-1細胞に貪食させたところ,EPSが濃度依存的にラテックスビーズの細胞内への取り込みを抑制することが明らかとなった.EPSによる貪食抑制を受けたTHP-1細胞と,活発にビーズを貪食した細胞の遺伝子発現をマイクロアレイ解析したところ,EPSによる貪食抑制を受けた細胞の約140遺伝子で2倍以上の発現上昇がみられた.今回の研究結果より,バイオフィルムを形成するP.intermedia由来のEPSが,ヒト単球系細胞であるTHP-1細胞の異物認識後の捕食を障害し,その遺伝子発現にも影響を与えることが明らかとなった.これらのことから,バイオフィルム形成細菌のEPS産生性は貪食細胞に対する抵抗因子として働き,さらには宿主細胞の動態に影響を与えることで組織侵襲性に関与していることが示唆された.
  • 水川 健司
    原稿種別: 本文
    2007 年 70 巻 3_4 号 p. A8-A9
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー
    根尖性歯周炎の難治化をもたらす,バイオフィルム様構造をもったEscherichia hermannii strain 11-2(E. hermannii strain 11-2)を対象に遺伝子解析を行い,バイオフィルム形成に関与すると推定される複数の遺伝子クラスターを特定するとともに,菌体性状との関係についても追究した.E. hermannii strain 11-2ゲノムに,トランスポゾン(EZ-Tn 5^<TM> <KAN-2>)を用いたランダムインサーションによる変異導入を行い,得られた変異導入株のうち,粘性物質産生性を失った株を,培地の粘度を指標にスクリーニングした.この変異株のトランスポゾン挿入箇所周囲の遺伝子配列は,DNA walkingにより求めた.菌体性状については,菌体表層構造の走査電子顕微鏡観察,アビオティックマテリアルへの付着性,LPSの性状,糖・タンパク合成能の変化を中心に検討した.トランスポゾンを用いたランダムインサーションによる変異導入の結果,486株が得られた.このうち,粘度が低下した株は6株(strains 8,9,140,186,292,455)であり,粘度と細胞表層の網目状構造の両方を欠き,完全にバイオフィルム形成能を失った変異株は1株(strain 455)であった.DNA walkingにより変異導入箇所周辺を解析したところ,変異はグラム陰性菌外膜リボ多糖(LPS)のO-糖鎖付加に関わるPerクラスター,LPSouter coreの糖鎖合成を行うWaaクラスターに存在していることが明らかとなった。親株,変異株とも,アビオティックマテリアルへの付着性は示さなかった.それぞれの株から精製したLPSを電気泳動解析したところ,変異株のパターンは親株とは異なることが明らかとなった.コンゴレッド培地,クマシー・コンゴレッド培地上で,糖合成,タンパク合成能について検討したところ,親株・変異株間で大きな差異は認められなかった.以上の結果から,E. hermannii strain 11-2のLPS合成に関わるPerクラスター,Waaクラスターへの変異導入が,培養菌液の粘性と菌体間結合に影響を及ぼすことが明らかとなった.Perクラスター内のABCトランスポーターであるWzt遺伝子のノックアウト株でのみ,培地の粘性と菌体表層の網目構造の両者が消失したことから,E. hermannii strain 11-2のバイオフィルム形成が,Wzt/Wzm依存性の膜輸送を介して行われている可能性が示唆された.
  • 鄭 文明
    原稿種別: 本文
    2007 年 70 巻 3_4 号 p. A11-A12
    発行日: 2007/12/25
    公開日: 2017/05/25
    ジャーナル フリー
    成長期における上顎前突症の矯正治療において,上顎骨の成長を抑制するためにヘッドギアを用いるとともに,下顎骨の劣成長を改善するためにバイオネーターが使用される.しかしながら,それぞれの装置単独での効果に関しての報告は多いが,ヘッドギアとバイオネーターを併用した治療効果に関する報告は少ない.本研究の目的は,下顎の劣成長を伴う成長期の上顎前突症に対し,ヘッドギアとバイオネーターを併用した時の顎顔面頭蓋における治療の効果を検討することである.被験者は上顎前突症患者から選択した.選択基準は上下顎骨格の差を示すANB角が5°以上で下顎骨が劣成長の症例とした.症例は9歳から13歳の男子35名,女子35名である.被験者全員にヘッドギアとバイオネーターを平均21か月併用し,治療前後の側貌頭部X線規格撮影を用いて,Downs分析,Northwestern分析およびLinear分析を行い,得られた計測値と矯正学講座所蔵の台湾人正常咬合者の計測値と比較検討した.その結果,上顎突出度,Y軸角,SNA角,ANB角において5%以下の危険率で有意差が認められ,上顎前突の傾向が減少する傾向が認められた.また,下顎は骨体長に大きな有意差を認められたが,mandibular plane angleが増大し下顎骨の成長変化は下顎の後下方回転を伴うことがわかった.以上の結果より,ヘッドギアおよびバイオネーターを用いた治療は,成長期台湾人の上顎前突症治療において有効であることが示されたが,下顎の後下方回転を可能な限り少なくすることが治療上好ましいことが示唆された.
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