歯科医学
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博士論文内容要旨および論文審査結果要旨
In vitroにおけるエナメル質の脱灰に及ぼす糖タンパク質およびフッ化物応用の影響(大阪歯科大学大学院歯学研究科博士(歯学)学位論文内容要旨および論文審査結果要旨の公表)
田治米 元信
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2007 年 70 巻 3_4 号 p. A3-A4

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抄録

エナメル質試料に対し,異なる局所的フッ化物応用を試みた上で,各種濃度の糖タンパク質を介在させた環境における経時的な脱灰過程のモニタリングを行うことにより,脱灰抑制に影響を及ぼすフッ化物応用の種類および糖タンパク質の濃度についてin vitro環境下で検討した.ウシ鏡面研磨エナメル質を,ムチン非添加および3種類の異なる濃度(0.29,0.87,2.70mg/mL)になるようにムチンを添加した脱灰溶液に浸漬した.各ムチン濃度におけるエナメル質試料は,脱灰溶液のみに浸漬した対照群,1日3回フッ化物配合歯磨剤溶液に5分間浸漬したフッ化物配合歯磨剤群,実験開始前にAPFゲルを5分間作用させたAPF群に分けてフッ化物応用を行った.エナメル質試料の脱灰程度は24,48,72,96時間目にQLF法によって解析して評価を行った.その結果,対照群ではムチンが存在することによって脱灰が抑制されることが分かり,0.87mg/mLまでの濃度でムチンが脱灰溶液中に存在すれば,脱灰を抑制する機能が発揮されていることが明らかとなったが,ムチンのみでは完全に脱灰を抑制することはできないことも同時に明らかとなった.また,APFの応用は高い脱灰抑制効果を導くことが明らかとなり,いずれの群においてもほとんど脱灰が認められなかった.さらに,口腔内に低濃度であってもムチンが存在すれば,低濃度のフッ化物の持続的な応用であったとしても,脱灰は高度に抑制されることも明らかとなった.初期う蝕の再石灰化には持続的な低濃度のフッ化物応用を行なうべきであると考えられているが,QLF法を応用し,個々の歯面における初期う蝕のあり/なし,および脱灰程度を診断したうえで,フッ化物局所応用プログラムの策定を行なうことが口腔内の健康の実現のために効果的である可能性が示唆された.

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© 2007 大阪歯科学会
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