2015 年 78 巻 2 号 p. 57-63
セツキシマブ感受性株HSC4とセツキシマブ耐性株であるSASの違いを検討するためにmonolayer cultureにおける増殖の血清依存性を比較した.HSC4は血清依存的増殖であったが,SASは血清非依存的増殖が可能であり,セツキシマブ耐性株は自律増殖性が高いことがわかった.そこでSASのsphere形成能をHSC4のそれと比較した.HSC4はsphereをまったく形成しなかったが,SASはsingle cellからsphere形成を行い,さらにサイズが増大するものが確認され,幹細胞性をもつことがわかった.サイズ増大が細胞増殖によることを確かめるためにKi67抗体を用いた免染を行った.SASでは特にaggregate周縁付近の多くの細胞の核がKi67で染色され,SAS aggregateの成長は浮遊aggregatesの細胞が増殖した結果であることが示された.さらにSASはanchorage independentな状態でaggregation cultureを行うことで,EGFR経路を利用した増殖システムに切り替わりセツキシマブ感受性となった.この結果は,癌細胞が幹細胞性をもつ場合でも,環境の変化により,細胞増殖システムが変化し,それによって薬剤感受性が異なる可能性を示唆している.