歯科医学
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78 巻, 2 号
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  • 大西 祐一, 渡辺 昌広, 安井 大樹, 藤井 智子, 伊達岡 聖, 窪 寛仁, 木村 一貴, 赤根 昌樹, 覚道 健治
    原稿種別: 本文
    2015 年 78 巻 2 号 p. 57-63
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2017/06/15
    ジャーナル フリー
    セツキシマブ感受性株HSC4とセツキシマブ耐性株であるSASの違いを検討するためにmonolayer cultureにおける増殖の血清依存性を比較した.HSC4は血清依存的増殖であったが,SASは血清非依存的増殖が可能であり,セツキシマブ耐性株は自律増殖性が高いことがわかった.そこでSASのsphere形成能をHSC4のそれと比較した.HSC4はsphereをまったく形成しなかったが,SASはsingle cellからsphere形成を行い,さらにサイズが増大するものが確認され,幹細胞性をもつことがわかった.サイズ増大が細胞増殖によることを確かめるためにKi67抗体を用いた免染を行った.SASでは特にaggregate周縁付近の多くの細胞の核がKi67で染色され,SAS aggregateの成長は浮遊aggregatesの細胞が増殖した結果であることが示された.さらにSASはanchorage independentな状態でaggregation cultureを行うことで,EGFR経路を利用した増殖システムに切り替わりセツキシマブ感受性となった.この結果は,癌細胞が幹細胞性をもつ場合でも,環境の変化により,細胞増殖システムが変化し,それによって薬剤感受性が異なる可能性を示唆している.
  • 安井 大樹, 大西 祐一, 渡辺 昌広, 藤井 智子, 木村 一貴, 窪 寛仁, 赤根 昌樹, 覚道 健治
    原稿種別: 本文
    2015 年 78 巻 2 号 p. 64-70
    発行日: 2015/09/25
    公開日: 2017/06/15
    ジャーナル フリー
    通常CD44は,様々な細胞の表面に発現している接着分子であるが,大腸癌や乳癌などでは高発現し,癌幹細胞のマーカーの一つと考えられている.同様にNuclear factor of kappa B(NFκB)は,炎症や免疫応答に関与することが知られているが,乳癌における癌幹細胞の維持に必要なシグナルと考えられている.本研究においてわれわれは,口腔扁平上皮癌細胞株であるSASおよびKBにおけるCD44の発現をWestern blottingにて,また特異的抗体を用いた免疫染色によってCD44の細胞内局在を調べた.その結果,いずれもCD44を発現した.特にSASは,癌幹細胞で発現するといわれているCD44 variant isoform(CD44v)の発現が明らかであった.免疫組織蛍光染色法ではいずれの細胞株もCD44の発現を認めたが,細胞株ごとに局在が異なっており,SASはKBと比べて細胞膜上に強く局在していた.さらに癌幹細胞の特徴の一つであるNFκBとそのリン酸化について調べた結果,SASはNFκBを発現し,活性化されていることが明らかになった.また,CD44やNFκBに対する抗癌剤として注目されているsulfasalazine(SSZ)により,SASの細胞増殖が抑制された.これらの結果は,乳癌を含む他の癌細胞と同様に,CD44vやリン酸化NFκBを発現しているSASが癌幹細胞性の性質を有し,癌幹細胞に対するSSZの感受性の効果を示すことができた.
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