2010 年 83 巻 7 号 p. 289-294
合成アントシアニン色素である2-hydroxy-4’-methoxychalcone(HMC)は,植物色素と同様の骨格構造を有しており,安全性が高く環境負荷が小さいフォトクロミック色素としての活用が期待されている。HMCをドライ条件で使用可能とすることを目的に,シリカとHMCの複合化ならびにそのフォトクロミック特性について検討を行った。
HMCのシリカへの吸着量を最大にするためには,HMC溶液にUV-A波を照射してフラビリウムカチオン型としたうえで複合化することが必要であった。HMC溶液の場合とは異なってHMC/シリカ複合体ではUV-C波による消色現象は観察されず,UV-A波による着色のみがみられた。暗所で5日間静置することで複合体は消色をしたが,高温度ならびに高湿度条件でより迅速であった。