胆管がん事案など最近の化学物質による労働災害の状況を踏まえ,労働災害を未然防止する仕組みを強化するため,労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成26年法律第82号)により,平成28年6月1日より化学物質を製造・流通もしくは使用するすべての事業者に化学物質のリスクアセスメントが義務付けられることとなった。しかし多くの企業にとって化学物質のリスクアセスメントは未経験であり,改正法の完全履行には困難が予想される。そこで本稿では,2015年9月18日に公示された「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」1)(以下「指針」と略記)などの厚生労働省資料を手掛かりとして,企業のとるべき対応とコントロール・バンディング,ECETOC TRA等のITツールによるリスクアセスメントの実際について解説する。