2018 年 91 巻 9 号 p. 310-315
さまざまな機能系において構造が機能を決定している例は数多くある。とくにナノテクノロジーなどの分野の進展につれて,機能物質をいかに開発するかばかりではなく,構造をいかに精緻に制御するかという面に機能系開拓の重点がシフトしてきたように思われる。本稿では,ナノ構造やその階層構造を制御することによって多彩な機能を出す方法論のいくつかの例をメソポーラス物質,交互吸着膜,セルフアッセンブリ構造の観点から示した。鋳型合成によって精密ナノ構造を内包した材料の合成やそれを積層したりすることによって階層構造が意図的に作製できるとと同時に,分子の自己組織化過程の妙により階層構造が自発的に形成されることもある。それらの階層構造は,簡便ながら効率の良い物質分離や感度の高いセンサーなどの機能系の開発に威力を発揮する。より高い機能の人工物質系を開発するために,このような階層構造を構築する方法論を開拓していくことが重要である。