紙への光沢付与や保護のために塗装されるコーティング剤は,塗装・表面加工方式の発展とともに,その形態も溶剤系,水性,そして硬化システムとしては,UV硬化型へと進化してきた。とくに,UV硬化型コーティング剤は,大量消費材である紙への塗装において,高い生産性向上に寄与できるコーティング剤である。
本稿では,おもにUV硬化型の紙用コーティング剤に関する基礎知識とその特徴について解説する。また,紙用コーティング剤が紙に付与できる環境性能の例についても紹介する。
日本を含む先進国の製紙業界は成熟期に入っている。板紙などの大量の紙の製造方法は,高速大型抄紙機による量産により効率的に製造されている。一方で生産量が少量である紙はその生産量に適合した規模の抄紙機で生産する。紙の製造における基本的な技術の多くは20世紀に完成し,その技術に基づいて改良がなされている。紙はパルプ繊維や内添薬品,抄紙機の制御条件を調整して設計する。本稿で最も優先する目的は,紙の製造方法に興味のある方々へ紙の設計方法や抄紙機を紹介することである。本稿では,さまざまな内添薬品の種類や用法,抄紙機仕組みや紙の塗工設備による紙のコーティング方法について紹介する。
日本では,高度経済成長下での用紙需要の急増,パルプ資源の枯渇不安と石油化学の将来に対する明るさの点からスタートした合成紙事業だが,その後2度の石油危機により状況は一変したため,㈱ユポ・コーポレーションでは合成紙の性能向上と特性を活かした「ニッチ用途」へ展開し,合成紙市場の拡大を進めてきた。その結果,「ユポ」は独自の樹脂加工技術を応用することにより,さまざまな機能を付与し,「紙」の代替だけではなく新しい素材の市場を確立した。
その中で「ユポ」は,美粧性・機能性・環境配慮を3本の柱として最新の加工技術および材料技術を十分に活用し高度な性能を備えた製品を生み出すべく取り組んでいる。
本稿では,「ユポ」がこれまで進めてきた印刷分野でのイノベーションを紹介し,50周年(2019年5月)に向けた印刷分野での新しい技術開発と「ユポ」の環境対応に対する取り組みについて紹介する。
さまざまな機能系において構造が機能を決定している例は数多くある。とくにナノテクノロジーなどの分野の進展につれて,機能物質をいかに開発するかばかりではなく,構造をいかに精緻に制御するかという面に機能系開拓の重点がシフトしてきたように思われる。本稿では,ナノ構造やその階層構造を制御することによって多彩な機能を出す方法論のいくつかの例をメソポーラス物質,交互吸着膜,セルフアッセンブリ構造の観点から示した。鋳型合成によって精密ナノ構造を内包した材料の合成やそれを積層したりすることによって階層構造が意図的に作製できるとと同時に,分子の自己組織化過程の妙により階層構造が自発的に形成されることもある。それらの階層構造は,簡便ながら効率の良い物質分離や感度の高いセンサーなどの機能系の開発に威力を発揮する。より高い機能の人工物質系を開発するために,このような階層構造を構築する方法論を開拓していくことが重要である。
近年,橋梁・道路・石油備蓄基地・石油掘削設備等に社会資本投入が活発である。一方で,これら設備の対策不備による腐食対策費は年々増大している。日本における腐食損失は年間3兆9769億円と報告されている1)。そこで,本稿では,鋼材の腐食機構および防食法の一つとして多く使われている塗料の防食機構と大型鋼構造物における塗装仕様の変遷について解説する。