色材協会誌
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総合論文
リン酸エステル銅錯体の近赤外線吸収染料への応用
林 直樹
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2021 年 94 巻 8 号 p. 225-230

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抄録

リン酸エステル銅錯体を樹脂染料に応用することを目的として,銅錯体の耐熱性,高分子との相溶性,耐光性について検討を行った。各アルキルリン酸エステル銅錯体の構造と耐熱性の関係を調査し,特定構造の銅錯体は250℃以上の熱分解温度を示すことがわかった。得られた耐熱性銅錯体と高分子との相溶性について検討を行い,銅錯体が均一に溶解して透明な樹脂材料が得られる組み合わせを見いだした。さらに,xenon weather meterを用いて耐光性を評価したところ,一般的な近赤外線吸収染料と比べてリン酸エステル銅錯体は半減期が3桁長く,優れた耐光性を示した。リン酸エステル銅錯体を導入した樹脂材料は可視光を透過し,近赤外領域を広く吸収する分光特性を有しており,市販の日射遮蔽フィルムよりも高い遮熱性能を有していた。また,耐光性試験において1,000 hr経過時点でも近赤外領域の吸収はほとんど変わらず,高い耐光性を示した。

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