色材協会誌
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研究論文
アルカリホウケイ酸無鉛フリット/ヘマタイト混合焼成体の色彩に及ぼす微細構造の影響
國毋 優香小川 実紗藤井 達生大倉 利典橋本 英樹
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2022 年 95 巻 5 号 p. 122-127

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抄録

陶磁器用多成分系アルカリホウケイ酸無鉛フリットとヘマタイトを混合焼成して得られる赤絵具焼成体の微細構造が,色彩に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。XRD測定,顕微鏡観察,元素分析およびメスバウアー分光測定の結果から,赤絵具を焼成すると焼成温度に依存して色彩が変化すると同時に,ヘマタイトの一部がガラス中に4配位のFe3+として溶解しヘマタイトの粒子径が増大する,いわゆるOstwald成長が進行することを確認した。一連の解析結果から,試料表面が平滑化すること,ヘマタイトが溶解し粒子数が減少することで低温域で彩度が向上するが,ヘマタイトの粒成長と過剰な溶解により,高温域で彩度が低下することを明らかにした。さらに,ヘマタイトが完全に溶解しイオン化するような高温域では,焼成体の着色機構がヘマタイト粒子の光吸収からガラス中の鉄イオンによる光吸収に変化することを明らかにした。

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© 2022 一般社団法人 色材協会
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