色材協会誌
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研究論文
近赤外有機光検出器への応用を指向した分子内励起子相互作用を示すビススクアレン色素の開発
澤田 隆平濱 玲史木下 早紀前田 壮志 鈴木 直弥八木 繁幸
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2024 年 97 巻 4 号 p. 94-102

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抄録

われわれは有機光検出器に用いる電子ドナー材料への応用を指向して,ベンゾ[1,2-b:5,4-b’]ジピロールを中心にもち,インドレニンからなるセミスクアレンもしくはそのジシアノビニレン類似体を分子両端にもつ二つのビススクアレン色素を合成した。これらの色素は分子内励起子相互作用に起因した分裂した電子吸収バンドを示した。中でも,ジシアノビニレン基を有するビススクアレン色素の低エネルギー側の吸収バンドは近赤外領域に観察された。それらの色素のサイクリックボルタンメトリーでは,酸化側への掃引においてブロードな酸化還元波が観測され,それら色素の一電子酸化体は二つの単位発色団に非局在化した分子軌道を有することが示唆された。ビススクアレン色素の最高被占分子軌道は,フラーレンベースの電子アクセプター材料に対する電子ドナーとして適切なエネルギーレベルをもつことが示された。近赤外吸収を示すビススクアレン色素とフラーレンアクセプターからなる混合薄膜は,約780 nmを極大とする近赤外吸収を示し,近赤外光照射による光誘起電子移動が期待された。実際,その混合薄膜を光活性層にもつ有機光検出器は750 nm光照射下で4.6×1011 Jones,800 nm光照射下で3.3×1011 Jonesの比光検出能を示した。この結果から,当該ビススクアレン色素が近赤外有機光検出器のドナー材料として機能することが明らかとなった。

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