1983 年 56 巻 2 号 p. 65-72
脂肪酸変性したペンタエリスリトール・フタル酸系アルキド樹脂とブチル化メラミン樹脂をブレンドした熱硬化塗膜の力学的性質に及ぼす安息香酸 (BA) の影響について検討した。その結果を要約すると, 次のようである。
(1) 変性脂肪酸の種類と油長がペンタエリスリトール・フタル酸系アルキド樹脂とグリセリン・フタル酸系アルキド樹脂では, 前者の剛直な分子構造により塗膜のガラス転移温度Tgは後者より高い。
(2) 変性脂肪酸量が一定でBA量を変えたアルキド樹脂の硬化塗膜は, BA量の増加によりTgが低下する。しかし変性脂肪酸量が1.0~0.9mole以下の場合には, BA量0.1~0.2mo1eにTgのピークが現われる。
(3) 硬化塗膜の静的ヤング率はBA量の増加とともに直線的に増大し, また内部ひずみはBA量0.2~0.3moleまでは増加とともに急減する。そしてこれ以上のBA量ではほぼ一定になる。
(4) 硬化塗膜の振かん硬さHpはTgに比例し, Hpは塗膜の粘弾性を反映している。