色材協会誌
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湿式法によるコバルト微粒子の合成
冨永 宏伊藤 征司郎吉原 正邦
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1989 年 62 巻 9 号 p. 529-535

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抄録

湿式法による金属コバルト超微粒子の合成を目的として, コバルト化合物の液中還元を試みた。
コバルト化合物としては塩化コバルト (II) およびトリス (アセチルアセトナト) コバルト (III) (以下, [Co(acac)3] と略す) を, 溶媒としては水, アソニールおよびジフェニルエーテルを, 還元剤としてはヒドラジン, ヒドロキノンおよび水素化ホウ素ナトリウムを使用した。
水やアニソールを溶媒とした場合は, 金属コバルトを得ることはできなかったが, [Co(acac)3] のジフェニルエーテル溶液に水素化ホウ素ナトリウムを加えて沸点の温度で加熱還流したのち, 冷却し, メタノールを加えて水素化ホウ素ナトリウムを分解し, ろ過すると, 黒色の強い磁性を持つ金属コバルトが得られた。しかし, この粒子はいちじるしく凝集していた。そこで, この凝集を防ぐため, N2ガスを流しながら還流を行ってみたところ, 凝集をかなり抑えることができた。しかも, N2ガスを流さずに表面水和酸化物層の薄いコバルトを得るには, 水素化ホウ素ナトリウムがモル比で [Co(acac)3] の20倍量必要であったが, N2ガス雰囲気下で還流すると, その約半分の量で得られた。この方法で得られたコバルト粒子は5~10nm程度の一次粒子が凝集したものであった。また, このものの純度は93.0%くらいであった。

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