1996 年 69 巻 5 号 p. 299-306
高機能性有機-無機複合体触媒の開発を目的として, 数種の塩基性無機酸化物の表面を種々のカルボン酸で修飾した粉体を合成した。その結果, カルボン酸は容易に酸化物表面に担持されることが判明した。
修飾粉体存在下, チオ酢酸とジ-l-メンチルフマレート1とのマイケル付加反応を行ったところ, いずれの酸化物においても反応は促進され, また付加生成物にエナンチオマー過剰が認められた。特に, 酸化マグネシウムにおいては, 触媒活性および立体選択性ともに良好であった。このような効果は, 酸化マグネシウム表面の塩基点でのカルボン酸アニオンの生成と酸点における基質の活性化による協奏的触媒作用, ならびに反応点に隣接する修飾カルボン酸の立体的要因により発現したものと考えられる。