2003 年 76 巻 11 号 p. 413-420
銅フタロシアニン (CuPc) の塩素化法として塩化アルミニウム/食塩の共融塩中で塩素化する方法 (AlCl3法) とトリクロルベンゼンの中で塩素化する方法 (TCB法) がある。前報ではAlCl3法で得られた塩素化CuPcは着色プラスチック材の成型収縮を顕著に抑制するのに対し, TCB法のものには効果が見られなかった。本研究では2つの方法によるに生成物と成形収縮との相関関係を検討した。まず, 両塩素化の反応過程で採取した生成物の質量分析を行い, 前者の生成物は塩素数の広がりが狭い塩素化CuPcの組成物であるのに対し, 後者はその広がりがきわめて広い組成物であることがわかった。次いで, 同じ生成物を分解して塩素化無水フタル酸とし, その分析結果から反応過程を解析し, 両塩素化法の生成物の違いと関連付けた。さらに, 組成物が構成する顔料結晶と成形収縮との関連性を考察し, AlCl3法の生成物においてはポリマーの核形成を促進する効果 (核剤効果) を阻害する表面構造を有する結晶が出現していると結論された。