神経眼科
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特集
見えないだけがロービジョンではない―ロービジョンの対象となる様々な疾患―
若倉 雅登
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2017 年 34 巻 1 号 p. 25-32

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抄録

ロービジョンや視覚障害は,専ら眼科で測定される視力や,視野などの視機能検査をもとに定義される.ここには,左右眼の信号が統合できない複視や,混乱視は入らないが,これらは生活の質を落とすばかりでなく,二次的な精神症状を惹起させる場合もある.また,自己制御不能の羞明,眼痛,霧視は,しばしば高次脳機能障害として生ずる,視覚ノイズと考えられる.羞明と眼痛は,一部共通する神経伝達の異常と考える仮説が提唱されている.これらの症状は,眼瞼痙攣をはじめとして,頭頚部外傷後遺症,脳脊髄液減少症,抗精神病薬,サリン中毒などを含む神経薬物中毒,パニック障害などの一部の精神疾患でみられる.
私は,こうした中枢性の視覚ノイズの発現機序として,例えば視床が感覚入力におけるローパスフィルターに例えられているように,視覚情報処理過程に存在する各種のフィルター機能を想定し,その脱落や低下によってさまざまな視覚ノイズが発現する概念を提唱した.これらの中枢性視覚ノイズは,神経眼科学に残された大きなテーマであると同時に,非常に重篤な日常の視覚生活能力低下になるにもかかわらず,社会医学的には,保険や福祉サービスから完全に抜け落ちてしまっているもので,大問題であると考えられることを論じた.

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© 2017 日本神経眼科学会
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