神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
特集
  • 不二門 尚
    2026 年43 巻2 号 p. 147
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/19
    ジャーナル 認証あり
  • 土井 勝美
    2026 年43 巻2 号 p. 148-157
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/19
    ジャーナル 認証あり

     1970年代から開発された人工内耳(cochlear implantation; CI)の臨床導入は,それまでの高度感音難聴に対する治療の概念を根本的に変える革命的な医療の幕開けとなった.内耳障害を病因とする先天性および後天性の高度感音難聴に対して,蝸牛内に挿入されたCI電極アレイから蝸牛神経への通電により,正確な音声情報が大脳皮質聴覚野に届けられるようになった.2020年末の時点で,CI手術症例数は世界全体で約400,000人,日本国内で約20,000人と推定されている.日本国内でCI手術が保険適応となったのは1994年,小児例に対するCI手術が保険適応となったのが1997年であり,成人例,小児例ともにその後も手術数は増加し,最近では年間約1,000〜1,500例のCI手術が施行されている.CI手術の適応基準は過去40年間で徐々に拡大し,両側70 dB以上の高度難聴へのCI手術,両側CI手術,そして1歳以上小児へのCI手術等へと改定されてきた.

     CIシステムは,ソフトおよびハードその両面で着実な進化を遂げてきた.体内装置であるインプラント,インプラント先端の電極アレイ,体外装置であるスピーチプロセッサ,いずれも高性能化,小型化が進んだ.インプラントの小型化,薄型化は,手術時間の大幅な短縮,手術の安全性の向上をもたらし,手術後合併症の発生を大幅に減少させた.インプラントのマグネットの形状や収納部位に新しい工夫がなされ,マグネットの取り外しなしで3.0テスラまでのMRI撮影がCI手術後も可能になった.スピーチプロセッサの小型化,軽量化,無ケーブル化,簡易防水化は,CI装用感を改善し,かつ装用機会を増加させた.音声情報の処理法(コード化法)の進歩,複数の指向性マイクロホンや雑音処理機構の採用等により,静寂下および雑音下での聴取能は著明に向上した.

     術中・術後の副腎皮質ステロイド投与,正円窓アプローチ(round window approach; RWA)の採用,内耳に優しい専用電極の挿入等の手術法の進化により,CI手術後も90%以上の症例で残存する内耳機能の保存が可能になってきている.CI各社は,さらに内耳機能の保存率を高めるため,電極アレイから副腎皮質ステロイドや神経栄養因子(NT-3,BDNF等)の放出機能を有する新型電極の開発を進めている.欧米では,光刺激,熱刺激,赤外線刺激による次世代型CIシステムの開発が進められ,またCI手術にもロボット手術が導入され,同手術の安全性と有効性の解析が進行中である.将来的には,遺伝子医療や再生医療の新技術との融合により,新たなるCI治療戦略の確立が期待されている.

  • 平田 雅之
    2026 年43 巻2 号 p. 158-165
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/19
    ジャーナル 認証あり

     出力型のBMIは,脳信号を正確に計測することにより,脳機能の局在性の特性を利用して脳信号を解読し,機器操作に用いる.そのため,脳信号を正確に計測するデバイス技術と脳信号を解読する人工知能技術が特に重要となる.脳信号を正確に計測するためには,侵襲型と呼ばれる脳信号を脳から直接計測する方法が有利であり,針電極を脳に刺入する方法や,脳表面に電極シートを留置する方法(ECoG)がある.頭皮電極等による脳信号計測は正確性に劣るが非侵襲であるためリハビリテーションの促進に用いられる.脳信号の解読方法としては,深層学習が導入され,BMIによる自然な会話が研究レベルでは実現しているが,正確なデータを大量に必要とするため,深層学習の実力を発揮するには,埋込みデバイスの実用化が待たれるところである.我々は,現在,ECoGを用いたワイヤレス植込みデバイスの臨床試験を開始すべく準備を行っている.最初の治験では障害者用の意思伝達装置を脳信号でスイッチ操作する際の安全性・有効性を評価するが,その後は,スマートデバイスのフリック操作やロボットの操作などを評価することにより,段階的に適用を拡大する計画である.

  • 森本 壮
    2026 年43 巻2 号 p. 166-171
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/19
    ジャーナル 認証あり

     網膜色素変性などの遺伝性網膜変性疾患で失明した患者に対して,人工網膜は失われた視細胞機能を代替し,視覚を再建する視覚補綴装置として開発されてきた.本稿では,人工網膜の基本原理と臨床応用の現状を概説するとともに,脈絡膜上経網膜刺激(STS)型人工網膜の開発と臨床試験成績を紹介する.さらに,脳科学的視点から人工視覚の特性を整理し,「見える」から「使える」人工網膜を目指した次世代技術と将来展望について述べる.

症例報告
  • 野口 久美子, 牧野 伸二
    2026 年43 巻2 号 p. 172-177
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/19
    ジャーナル 認証あり

     64歳の女性が1か月前からの無痛性の左眼の霧視を主訴に受診した.左眼視力は(0.07)で,眼球運動時痛はなく,視神経乳頭腫脹はなかった.ガドリニウム造影MRI検査により,左眼視神経鞘の肥厚と造影増強効果を認めた.血清アンジオテンシンI変換酵素と可溶性IL-2受容体の高値がみられた.胸部CT検査で両側肺門および縦隔リンパ節腫大が確認された.これらの所見はサルコイドーシスを示唆しており,サルコイドーシスによる視神経周囲炎と診断した.ステロイド投与により視力は速やかに回復し,視神経鞘の造影増強効果も軽快した.

     視神経周囲を初発症状とするサルコイドーシスの報告は極めて稀であるが,視神経周囲炎の原因に考慮する必要がある.

  • 長谷川 友加里, 植木 智志, 畑瀬 哲尚
    2026 年43 巻2 号 p. 178-183
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/19
    ジャーナル 認証あり

    【目的】腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor-α: TNFα)阻害薬と中枢神経系脱髄性疾患の関連が多数報告されている.我々が経験したインフリキシマブ治療中に右視神経炎を発症した乾癬性関節炎の一例を提示し,TNFα阻害薬に関連する視神経炎の病態について考察する.

    【症例】新潟大学医歯学総合病院眼科初診時34歳女性.8年間アダリムマブによる治療を受けていたが,関節症状の増悪のためインフリキシマブに変更となった.インフリキシマブ開始後1年3か月で右視神経炎を発症し,視力は指数弁まで低下した.ステロイドパルス療法1クールにより視機能は改善した.その後,インターロイキン17A(IL-17A)阻害薬であるイキセキズマブへ変更したところ,視神経炎は再発していない.

    【結論】本症例は,同一クラスの薬剤に変更後に視神経炎を発症したが,原因薬剤中止およびステロイドパルス療法後に視神経炎は改善した.その後IL-17A阻害薬へスイッチングし経過良好である.視神経炎発症によりTNFα阻害薬が使用できない場合の代替治療薬として,IL-17A阻害薬は考慮されて良い.

  • 坂本 正明, 林 麗如, 黒澤 伸之, 青木 典子, 玉 歩美, 井上 晋也, 鈴木 利根, 町田 繁樹
    2026 年43 巻2 号 p. 184-189
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/19
    ジャーナル 認証あり
    電子付録

    【緒言】Duane症候群は外転・内転障害と内転時の眼球後退を特徴とする先天眼球運動障害である.臨床的にはⅠからⅢ型に分類されるが,近年synergistic divergenceを呈する亜型が新たにⅣ型として分類された.今回,乳幼児期から詳細に経過を追えたDuane症候群Ⅳ型の一例を経験したので報告する.

    【症例】症例は9か月男児.出生時より外斜視を認め当院紹介受診.初診時,左眼外下斜視,内転制限を認め,内転努力時に外下方偏位(synergistic divergenceとdownshoot),軽度眼球後退を呈し,頭位異常は認めなかった.2歳3か月時に施行したMRIで左内直筋菲薄化を認めた.2歳5か月時,視力は右0.3,左0.1で斜視弱視を認め弱視治療を開始した.3年以上の経過で眼位・眼球運動に明らかな変化は認めなかった.

    【考按】本症例はDuane症候群Ⅳ型の典型的な臨床所見を呈し,MRIにより内直筋の菲薄化が確認された.これは既報と一致する所見であり,動眼神経の分枝が本来の内直筋ではなく外直筋に偏った異常支配を示唆する.その結果,内直筋の活動が低下し,菲薄化や萎縮につながったと考えられた.稀少なDuane症候群Ⅳ型の長期観察は,病態理解に重要な知見となる.

English Section
  • Suntaree Thitiwichienlert, Juraiporn Suntiruamjairucksa, Kritrath Pani ...
    2026 年43 巻2 号 p. 190-193
    発行日: 2026/06/25
    公開日: 2026/06/19
    ジャーナル 認証あり

    Background: Internuclear ophthalmoplegia (INO) is rarely caused by a focal traumatic brain injury (TBI) affecting a medial longitudinal fasciculus (MLF) lesion.

    Purpose: To report a rare case of traumatic INO caused by diffuse axonal injury (DAI) at the pontine tegmentum.

    Case report: A 20-year-old male arrived at the trauma center three hours after a motorcycle accident. He briefly lost consciousness but regained it with a full Glasgow Coma Scale (GCS) score, though he could not recall the incident. The patient denies headaches, and reports no weakness or neck pain, but complains of binocular diplopia and oscillopsia. Ocular motility and alignment demonstrated a large angle exotropia with an adduction deficit in the right eye and abducting nystagmus in the left eye. Pendular vertical nystagmus and intact convergence were also observed. An emergency non-contrast computed tomography (CT) scan of the brain revealed a soft tissue injury in the left occipital region, with no evidence of acute intracranial hemorrhage or skull fracture. Contrast-enhanced magnetic resonance imaging (MRI) of the brain was performed 48 hours after injury and revealed a T2/FLAIR-hyperintense lesion with restricted diffusion and small T2 blooming artifact focus at the right side of pontine tegmentum, which could represent diffuse axonal injury (DAI) from microhemorrhages. Management was observed for a recovery of motility and subjective diplopia.

    Conclusions: This case suggests that although INO is rarely caused by TBI, it can occur as a result of DAI due to microhemorrhages in the brainstem. Therefore, this condition should also be considered in patients with minor head trauma.

入門シリーズ129
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