眼窩内髄膜腫の中でも,蝶形骨縁から発症し眼窩内に伸展するタイプは全体の50~90%を占める.ほとんどが良性疾患であるが,眼窩内という限られた空間で骨内及び硬膜内浸潤を来たすため,眼球突出,視機能障害,眼球運動障害の三徴をはじめ,様々な症状を来たす.
症例は73歳女性.術前の左眼矯正視力は0.5,頭部CTで骨硬化像,過骨形成を認め,眼窩造影MRIで肥厚硬膜による左視神経圧排を認めた.発症後6か月で左視神経管開放術を行い,術後3か月で左眼矯正視力は1.0に改善した.硬膜の病理検査の結果から,髄膜腫(WHO Grade I)の診断となった.
髄膜腫による圧迫性視神経症は緩徐な進行であり,神経細胞が不可逆的に障害されるのに時間がかかると考えられる.このため,ある程度時間が経過していても,治療により視機能改善が期待できる.骨肥厚や骨硬化像という特徴的な所見を認める際には,髄膜腫も鑑別に挙げて精査する必要がある.
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