神経眼科
Online ISSN : 2188-2002
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選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
特集
  • 毛塚 剛司
    2024 年 41 巻 2 号 p. 85-86
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/05
    ジャーナル 認証あり
  • 山村 隆
    2024 年 41 巻 2 号 p. 87-93
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/05
    ジャーナル 認証あり

     視神経脊髄炎(NMO)は,再発性の視神経炎と脊髄炎を呈する疾患で,臨床的には多発性硬化症(MS)と類似する.20年以上の研究によって,水チャネルタンパクアクアポリン4(AQP4)特異的な自己抗体が病原因子であることが確認され,NMO病態に関係する炎症性サイトカイン,ケモカイン,炎症性細胞が同定されている.病態機序が推定できるようになり,NMOの治療標的として補体C5,インターロイキン6(IL-6)受容体やB細胞が同定され,それぞれを標的とする医薬品開発が進んだ.我々の研究チームは,IL-6受容体シグナルがNMO病態において重要な役割を果たすことを発見し(Chihara et al. 2011),さらに抗IL-6受容体シグナル抗体トシリズマブのNMO患者における安全性と有効性を検証する臨床研究を実施した(Araki et al. 2014).このproof-of-concept研究の結果を受けて実施されたグローバル臨床治験では,抗IL-6受容体シグナル抗体サトラリズマブがAQP4抗体陽性のNMO患者に有効であることが示された.分子標的医薬が利用できる時代が到来して,多くのNMO患者において,グルココルチコイド剤に依存せずに,再発を予防することが可能になった.抗IL-6受容体シグナル抗体開発の初期-中期段階は,日本のアカデミアが担ったことは忘れられるべきではない.

  • 増田 眞之
    2024 年 41 巻 2 号 p. 94-106
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/05
    ジャーナル 認証あり

     重症筋無力症(myasthenia gravis: MG)は全身に症状を呈するが,眼瞼下垂や複視,羞明等の眼症状が先行して自覚することが多く,眼科医に初診となる場合が多い.脳神経内科医との連携は必須である.近年,全身型MGに対しては数々の分子標的薬が登場しているが,すべて眼筋型MGに対しては保険適応がない.全国多施設共同によるJapan MG registryの横断的調査データの2012年と2021年を比較すると,経口プレドニゾロンの使用率は増加していたが,使用期間に差はなく調査時用量,最大使用量は低下していた.何らかの免疫治療開始時期は早まっていた.免疫抑制剤の使用率に差はなかった.胸腺摘出術は減っていた.最も差があったのはステロイドパルス療法の使用率が増加したことであった.その結果,治療目標であるMM-5 mg達成は61.0%から73.8%まで改善し,患者QOLスケールの検討においても改善傾向が認められた.しかし,2021年調査では難治性MG患者が調査され,眼筋型患者においても5.5%存在し,患者背景や治療内容の違いに差は見られず,予測不可能であり今後も従来治療では刃が立たない患者群が一定の割合で存在する可能性があった.眼筋型MGにおいても新規治療薬の開発が期待される.

  • 小出 玲爾
    2024 年 41 巻 2 号 p. 107-112
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/05
    ジャーナル 認証あり

     炎症性神経疾患では,眼症状が唯一の初期症状であることや,特徴的な眼症状が診断に結びつくためのキーポイントになることがある.本稿ではいくつかの炎症性神経疾患を中心に症例を提示し(視神経脊髄炎や重症筋無力症は他セッションを参照していただきたい),その神経眼科学的特徴や日常診療における注意点を解説する.シンポジウムにおいては,眼症状を呈した(1)肥厚性硬膜炎,(2)opsoclonus-myoclonus-ataxia症候群(OMAS),(3)NMDA受容体脳炎に伴う眼症状,(4)Whipple病に伴う眼症状,を解説した.そのほかに本稿ではFisher症候群の眼症状,甲状腺眼症についても概説する.

  • 横内 裕敬
    2024 年 41 巻 2 号 p. 113-125
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/05
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     このたび「多発性硬化症・視神経脊髄炎スペクトラム障害 診療ガイドライン2023」が多発性硬化症・視神経脊髄炎の診断・治療の指針として発刊され,治療だけでなく,疫学・病因や詳細な病態,そして必要な検査から診断に至るまで,治療後の経過やその予後といったところまで広く網羅されている.本ガイドラインで眼科医が主に関連するのは中枢神経系炎症性脱髄疾患で視神経炎を合併し視力障害や視野障害がみられた症例である.具体的には多発性硬化症(multiple sclerosis: MS)に伴う視神経炎,ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白質抗体関連疾患(myelin oligodendrocyte glycoprotein antibody-associated disease: MOGAD)視神経炎,視神経脊髄炎スペクトラム障害(neuromyelitis optica spectrum disease: NMOSD)であり,それらの臨床像や検査所見がそれぞれの疾患に特徴的なことが解説されている.眼科医がこれらの疾患に直接携わる機会があるのは視神経炎が合併した症例に限られるが,この際に視力,対光反射,眼底検査,相対的瞳孔求心路障害(relative afferent pupillary defect: RAPD),限界フリッカ値(CFF)の測定,視野検査,加えて光干渉断層計(OCT)検査を視神経炎発症後も継続的に施行することの重要性が本ガイドラインで示されている.視神経の評価にMRI(magnetic resonance imaging)撮像の重要性が再認識され,萎縮性または活動性炎症の判別には造影MRIの必要性も示された.本ガイドラインの要旨とその背景,さらには最新のエビデンスに基づく考え方とはどのようなものか,眼科医がとくに抑えておくべきポイントについてまとめてみたい.

症例報告
  • 西村 花音, 御任 真言, 田中 克明, 榛村 真智子, 小橋川 剛, 高橋 浩一, 梯 彰弘, 蕪城 俊克
    2024 年 41 巻 2 号 p. 126-131
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/05
    ジャーナル 認証あり

     症例は25歳女性.両眼虹彩炎,視神経乳頭の発赤,蛍光眼底造影でシダ状蛍光漏出を認めた.HLA-B51陽性で,全身所見で4つの主症状と1つの副症状を認めたため,ベーチェット病完全型と診断した.3週間後右眼矯正視力0.5と視力低下し,耳側半盲が出現したが,視野欠損は3日後に消失した.当院初診時には矯正視力両眼1.2,インフリキシマブ治療によりぶどう膜炎は再発しなくなっていた.しかし初診9か月目に両眼に眼痛を生じ,両眼矯正視力0.15に低下した.限界フリッカ値は正常から軽度低下,頭部造影MRIは異常なく,視力低下の原因は不明であった.視力低下はその後1年継続し,両眼の視野狭窄は徐々に進行した.神経ベーチェット病は髄液中インターロイキン-6低値から否定的であった.別病院で脳脊髄液減少症が疑われ,硬膜外生理食塩水注入試験を施行したところ,両眼矯正視力0.5に改善,脳脊髄液減少症と診断された.その後,硬膜外自己血注入療法を2回施行され,両眼矯正視力1.2,視野も正常化した.既知の疾患との整合性を認めない原因不明の視野欠損をみた時,脳脊髄液減少症の可能性も考える必要がある.

  • 守屋 育美, 増田 明子, 木村 亜紀子, 望月 嘉人, 五味 文
    2024 年 41 巻 2 号 p. 132-138
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/05
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     8歳男児.左眼の視力低下と眼瞼下垂,眼球運動障害で受診した.前医の単純MRIでは異常はみられなかった.1年前,右眼の視力低下と外転神経麻痺を発症し自然寛解したと考えられるエピソードがあった.当院初診時視力は右眼(1.2), 左眼(0.1),左眼の瞳孔は散大し直接・間接対光反射ともに消失していたが,右眼の間接対光反射は正常であった.左眼の眼瞼下垂と高度な外斜視,内転,上転,下転方向への眼球運動制限がみられ,左完全動眼神経麻痺を認めた.造影MRIにて,中脳の左動眼神経に沿って増強効果を認め,左動眼神経炎と考え,過去の既往から慢性炎症性脱髄性多発神経炎(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy:CIDP)を疑い,ステロイドパルス療法を2クール施行したところ,1か月後には左動眼神経麻痺は寛解し,視力も1.5に改善した.右眼の間接対光反射が正常だったことから,左視神経炎は否定的で,視力低下の原因は不明であった.小児の動神経炎の診断に造影MRIが有用であった.

  • 山﨑 智幸, 森 弘樹, 磯貝 正智, 中山 禎司
    2024 年 41 巻 2 号 p. 139-143
    発行日: 2024/06/25
    公開日: 2024/07/05
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     眼窩内髄膜腫の中でも,蝶形骨縁から発症し眼窩内に伸展するタイプは全体の50~90%を占める.ほとんどが良性疾患であるが,眼窩内という限られた空間で骨内及び硬膜内浸潤を来たすため,眼球突出,視機能障害,眼球運動障害の三徴をはじめ,様々な症状を来たす.

     症例は73歳女性.術前の左眼矯正視力は0.5,頭部CTで骨硬化像,過骨形成を認め,眼窩造影MRIで肥厚硬膜による左視神経圧排を認めた.発症後6か月で左視神経管開放術を行い,術後3か月で左眼矯正視力は1.0に改善した.硬膜の病理検査の結果から,髄膜腫(WHO Grade I)の診断となった.

     髄膜腫による圧迫性視神経症は緩徐な進行であり,神経細胞が不可逆的に障害されるのに時間がかかると考えられる.このため,ある程度時間が経過していても,治療により視機能改善が期待できる.骨肥厚や骨硬化像という特徴的な所見を認める際には,髄膜腫も鑑別に挙げて精査する必要がある.

臨床と研究の接点
原典で読む神経眼科シリーズ
印象記
2023年第9回神経眼科知識評価プログラム(NOKAP)テスト実施報告
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