2024 年 41 巻 1 号 p. 24-32
【目的】左半側空間無視(USN)と左同名半盲(HH)に対し,視線計測装置(Gazefinder)を用いて衝動性眼球運動(SEM)と滑動性眼球運動(SPEM)を測定し,視覚的注意特性を捉える評価指標の臨床応用の可能性を検討した.
【方法】対象は20歳女性の左USN 1例(右基底核静脈奇形による出血)と43歳女性の左HH 1例(右後大脳動脈領域の急性期脳梗塞)であった.眼球運動の評価指標はSEM視線移動量,左右空間のSEM視点取得率,SPEMのSEM混入回数とした.
【結果】視標振幅30°のSEM視線移動量は,左USNで7.2~23.8°,左HHで28.0~29.6°であった.左右空間の視点取得率は,右空間で左USNが82%,左HHが96%,左空間で左USNが12 %,左HHが91 %であった.SPEMのSEM混入回数は,左USNが1~6回,左HHが2~3回であった.
【結論】評価指標はUSNとHHで異なるパターンを示したことから,眼球運動の定量的評価指標となり得ると考えられた.