抄録
信用格付は,資本市場において必要不可欠な存在となっており,情報生産機能の発揮を通じた情報の非対称性の緩和等に寄与していくことが期待される。一方,信用格付は,銀行の健全性規制に利用されていること等もあり,景気変動増幅効果(プロシクリカリティ)等広く経済に影響を与える可能性が指摘されている。国際的な金融危機の経験を踏まえ,銀行規制における格付依存の軽減や格付会社規制の導入といった政策対応が行われているが,日本信用格付学会においては,その効果等について多面的に議論・検証がなされることを期待する。さらに,最近では,ESGやデジタル化等,新しいリスク要素の信用格付評価への織り込みなど,分析手法のアップデートの必要性が高まっている。加えて,コロナ禍における信用格付評価についても,国際的に金融監督当局の関心が高く,学術的にも分析すべき視点が多くある。日本信用格付学会が,時代の変化も取り込みながら,日本での信用格付の役割,特徴を明らかにしつつ,理論的・実証的な研究を行い,政策的な提言を含め,積極的に問題提起されることを期待している。