抄録
格付会社は,企業グループに属する会社の個社評価にあたって,“グループ信用力”という考え方を利用する場合がある。これは一部格付会社により,便宜的に用いられる概念であるが,グループ会社間の相互関係は企業グループの個社の信用力を分析する際に,格付会社に共通してみられる検討事項である
一般的に,企業グループの親会社の信用力は,その傘下会社を含めた信用力に等しく,こうした親会社の格付がグループの信用力を構成するといえる。親会社がグループの持株会社である場合も,グループの信用力が持株会社の信用力に相当する。通常,事業会社グループの持株会社の格付は,グループの信用力と同等とみられている。一方で,金融機関グループの持株会社の格付はグループの信用力を象徴する主要な子会社金融機関の格付を下回ることがある。そのような判断をする際には,“構造劣後性”の概念や“ダブルレバレッジ(比率)”の考え方が用いられることがある。
企業グループの傘下会社(子会社等)の格付では,親会社やグループの信用力をベースとして傘下会社の信用力を決めるトップダウンアプローチと,傘下会社自体の評価を重視して親会社やグループの信用力を加味するボトムアップアプローチのいずれかが適用される。どのような場合にどちらのアプローチが採用されるかはそれぞれの格付会社の格付方法によって異なるが,いずれにせよ原則として,子会社等グループの傘下会社の格付は,親会社の格付若しくはグループの信用力を上回れない。
非金融事業を主力事業とする企業グループ内の金融事業の評価の取り扱いは,そのような企業グループの信用力を検討する際の重要なポイントとなることがある。格付会社はその評価分析に関して,様々な工夫をしているがケースバイケースで判断されていることが多く,キャプティブファイナンス事業がグループの非金融事業親会社等の信用力に一定程度の影響を及ぼすと考えられる場合のアプローチを除いて,体系的に確立されたアプローチは存在しないという点に課題が残る。