心臓
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症例
ANCA関連血管炎類似の臨床像を呈したBartonella quintanaによる血液培養陰性亜急性感染性心内膜炎の1例
杉山 裕章佐原 真今井 靖松岡 理恵廣井 透雄平田 恭信永井 良三小野 稔高本 眞一岡本 耕小池 和彦菊池 賢
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2009 年 41 巻 10 号 p. 1102-1108

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抄録

症例は64歳,土木作業員の男性.3カ月前からの労作時息切れ,倦怠感を主訴に来院した際,大動脈弁への疣腫付着と重症大動脈弁閉鎖不全を指摘され入院となった.直前の歯科処置歴なし.感染性心内膜炎(IE) が最も疑われたが,発熱に乏しく炎症所見も軽度で血液培養はすべて陰性であった.一方,血管炎を示唆する下腿紫斑や糸球体腎炎による腎機能増悪とともに細胞質型抗好中球細胞質抗体(c-ANCA) 陽性を示した.血液培養陰性心内膜炎を想定しceftriaxoneおよびgentamicinによる抗菌薬治療を開始した後,Bartonella抗体陽性と判明したためdoxycyclineを追加し待機的に大動脈弁置換術を施行した.摘出弁検体による培養および組織診でもBartonella属は証明されなかったが,PCR(polymerase chain reaction) 法を用いた制限酵素断片長多型(RFLP) 解析により起炎菌はB. quintanaと判明した.近年,Bartonella属は血液培養陰性IEの起因菌として認識されつつあるが,診断法の困難性などから本邦での報告は稀少である.さらには高力価c-ANCAとともに細小血管炎の徴候が見られたのに加えて,血液培養陰性でもあり,心内膜病変を合併したANCA関連血管炎との鑑別を要した点でも臨床的示唆に富んでおり,文献的考察を交えて報告する.

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© 2009 公益財団法人 日本心臓財団
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