心臓
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HEART’s Special 日本心臓財団シンポジウム クリニックの症例から学ぶ日欧米の循環器ガイドライン2023
HEART@Abroad
HEART’s Up To Date
[臨床研究]
  • 松田 航星, 渋谷 和之, 横山 大樹, 高橋 佳美, 笠原 信太郎, 江口 久美子, 玉渕 智昭, 山口 展寛, 尾上 紀子, 篠崎 毅
    2024 年56 巻8 号 p. 800-807
    発行日: 2024/08/15
    公開日: 2025/08/15
    ジャーナル フリー

     背景:低リン血症とQT延長に関する系統的な研究はこれまでない.
     方法:2019年4月1日から4年間に当院に入院した連続患者58,516人のうち,低リン血症(血清P≦1.5 mg/dL)を呈し,同日に12誘導心電図を施行し,かつ治療後に血清リン濃度と12誘導心電図を同日に検査された症例を対象とした.器質的心疾患,リフィーディング症候群,低カリウム血症,低カルシウム血症,急性脳疾患,QT延長と関連する薬剤を内服している症例,心房細動,脚ブロック,ショックを呈する症例は除外した.治療前後の血清リン濃度,QT時間,Bazettの補正式によるQTcB,およびFridericiaの補正式によるQTcFを評価した.血清リン濃度とQTの関係を明らかにするために,治療前後のQTcB─血清リン濃度関係とQTcF─血清リン濃度関係を検討した.
     結果:基準に合致する症例は9例であった.治療前後で血清カリウム濃度,補正血清カルシウム濃度,血圧,心拍数に有意差を認めなかった.血清リン濃度は1.3±0.3 mg/dLから2.4±0.5 mg/dLに有意に上昇した(p<0.01).QTcBは0.47±0.03 sから0.41±0.03 sに,QTcFは0.44±0.03 sから0.39±0.02 sに,それぞれ有意に短縮した(p<0.001).血清リン濃度の正常化に伴い,QTcB─血清リン濃度関係とQTcF─血清リン濃度関係は右下へ偏移した.
     結論:低リン血症はQT時間の延長に関連する.

[臨床研究]
  • ─病院前での循環器救急医療の実情に関するアンケート結果から
    菊地 研, 田原 良雄, 加藤 正哉, 今村 浩, 竹内 一郎, 笠岡 俊志, 西山 慶, 花田 裕之, 三宅 章公, 山本 剛, 佐藤 直 ...
    2024 年56 巻8 号 p. 808-819
    発行日: 2024/08/15
    公開日: 2025/08/15
    ジャーナル フリー

     循環器救急医療では,病院前救急搬送システムとの連携とそれを司る「メディカルコントロール(MC)協議会」への参画が重要である.病院前救急医療への循環器医の参画状況を明らかにし,課題を抽出するため,日本循環器学会医師会員を対象に「病院前での循環器救急医療の実情に関するアンケート」調査をwebで実施した.このアンケートには1,377名の回答を得た.回答者の90%は勤務医で,約80%が所属している医療施設に循環器内科医として勤務しており,その施設の救急の内訳は2次救急が44%,3次救急が41%を占めた.それでも,「MC」という言葉を知っているのは60%に留まり,「MC」の言葉を知っている回答者のうちで,「MC協議会」に関与しているのは,わずか18%(145名)であり,救急隊が行った処置の事後検証に関与しているのは25%,救急隊が行う処置プロトコルの作成に関与しているのは8%に留まった.回答者が勤務している地域で「12誘導心電図伝送が行われている」のは35%以下で,院外での蘇生時に使用されたAEDの内部データは40%を超える地域では治療に役立てられていないことがわかった.自由記載する学会への要望では,AIテキストマイニングを用いて解析すると,①救急車からの12誘導心電図伝送システムの普及,②救急隊員への教育と搬送システムの構築,③AEDの内部データの入手,④都市部でのPCIセンターの集約化,⑤地方での緊急PCIの24時間体制の構築,が挙げられた.

[Editorial Comment]
[症例]
  • 高村 洸輝, 宮本 雄也, 野口 達哉, 宮川 和也, 久保 亨, 山崎 直仁, 江戸 直樹, 三石 淳之, 北川 博之, 花﨑 和弘, 三 ...
    2024 年56 巻8 号 p. 822-828
    発行日: 2024/08/15
    公開日: 2025/08/15
    ジャーナル フリー

     腹部大動脈瘤に対して人工血管置換術後,被覆した残存瘤壁内の人工血管周囲漿液腫増大および吻合部仮性動脈瘤疑いで2度の手術歴がある88歳男性.X年9月,瘤壁内漿液腫増大による人工血管右脚の圧排で右下肢跛行が出現し,右脚内にステントグラフトを留置し症状は改善した.しかし翌月から38℃台の発熱を認め,単純CTで腹部残存瘤壁内人工血管周囲にガス像を認めたため,人工血管感染を疑い入院加療を開始した.当初心臓血管外科から大動脈消化管瘻の可能性ありとのことで上部消化管内視鏡検査(GIF)の勧めもあったが,腹痛などの消化器症状に乏しくPET-CTでも消化管に集積を認めなかったため,感染を疑う大動脈瘤患者へのGIFリスクを考慮し,まず抗菌薬治療で経過をみた.しかしその後も瘤内ガス像が遷延するため,GIFを施行したところ,十二指腸に瘻孔を認め大動脈十二指腸瘻の診断に至った.外科的根治術が必要と判断し十二指腸部分切除およびリファンピシン浸漬グラフトによる再人工血管置換術と大網充填が施行された.術後6週間の抗生剤投与を行い,45日目に自宅退院となった.大動脈消化管瘻は,腹痛,腹部拍動性腫瘤,消化管出血が古典的3徴として挙げられ,十二指腸に瘻孔をきたす頻度が高い.本症例は瘤壁内漿液腫との交通であったため腹部症状に乏しく,内科入院中に確定診断のためのGIFまで時間を要した.人工血管周囲に生じた漿液腫と十二指腸の交通した稀な症例と考え報告する.

[症例]
  • 成瀬 瞳, 田口 真吾, 田中 圭
    2024 年56 巻8 号 p. 829-834
    発行日: 2024/08/15
    公開日: 2025/08/15
    ジャーナル フリー

     肝硬変は進行性の肝障害であり,凝固能異常などを合併する予後不良な疾患であるため,外科的治療に際して,術中から出血,肝機能増悪などのリスクが伴い,手術適応や術式の決定に際しては慎重な検討が必要とされている.今回,我々は肝硬変を合併した大動脈解離症例に対する手術を経験したので報告する.症例は64歳,女性.内科で食道静脈瘤を合併した肝硬変と診断され,病態評価目的のCTで,慢性Stanford A型大動脈解離の診断となった.食道静脈瘤の治療を先行した後に,待機的に常温体外循環下に上行大動脈人工血管置換術を施行した.術後肝機能の悪化を認めず,術後21日目に独歩退院した.本症例では,大動脈遮断の位置を工夫し,常温体外循環下に手術を行うことで,術後の不可逆的な肝機能障害を回避することができた.

[症例]
  • 森 旭弘, 加藤 貴吉, 山口 聖次郎, 佐藤 優行, 小椋 弘樹, 梅田 悦嗣, 坂井 修, 島袋 勝也, 市橋 昂樹, 小林 一博, 土 ...
    2024 年56 巻8 号 p. 835-840
    発行日: 2024/08/15
    公開日: 2025/08/15
    ジャーナル フリー

     症例は59歳男性.健診で糖尿病を指摘され当院糖尿病内科に教育入院した際に行われたスクリーニング目的の経胸壁心エコー検査で大動脈弁尖に付着する腫瘤影を指摘された.経食道心エコー検査(TEE)では,左冠尖腹側に付着する,軟性,5×7 mm大の可動性のある腫瘤を認めた.他心腔内に腫瘤形成は認めず,大動脈弁逆流も伴っていなかった.形態的に血栓または乳頭状線維弾性腫が疑われた.全身精査では明らかな梗塞所見を認めなかった.可動性のある心内腫瘤のため診断的目的も含めて手術適応と判断し,弁への浸潤度次第で機械弁置換術も考慮した上で腫瘤切除術を計画した.手術は右第3肋間アプローチ(6 cm皮切)にて完全内視鏡下で施行した.腫瘤は左冠尖腹側に,疎に線維性付着しており,牽引すると容易に剝離摘出できた.肉眼的には弁尖自体への浸潤はないものと判断し,他に弁尖異常のないことを確認して大動脈を閉鎖した.心拍再開後のTEEで弁機能不全のないことを確認し手術を終了した.腫瘍は肉眼的にイソギンチャク様の形態を呈しており,病理組織検査で乳頭状線維弾性腫と確定診断した.術後経過は良好で術後9病日に独歩退院し,約8カ月が経過した現在,再発を認めていない.乳頭状線維弾性腫に対しては腫瘤摘出,あるいは弁切除などの手術報告があるが,我々は完全内視鏡下に剝離摘出が可能であった乳頭状線維弾性腫の1例を経験したので報告する.

[Editorial Comment]
[症例]
  • 井原 努
    2024 年56 巻8 号 p. 842-846
    発行日: 2024/08/15
    公開日: 2025/08/15
    ジャーナル フリー

     S状結腸穿通に続発した人工血管感染に対し人工血管抜去・非解剖学的バイパス術により救命しえた症例を経験した.
     症例は80歳男性,腹部大動脈高位閉塞に対し大動脈─両総大腿動脈バイパスを施行後,当院循環器内科でフォローされていた.熱発を認めたため施行した腹部造影CTにて人工血管周囲にガス像を認めた.またガス像近傍に周囲脂肪の炎症を伴ったS状結腸も認めたため,S状結腸穿通に伴う腹部人工血管感染と診断し,人工血管抜去および右腋窩─両総大腿動脈バイパスを施行した.今回S状結腸穿通による人工血管感染という比較的稀な症例を経験したので報告する.

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