背景:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は急性心筋梗塞患者の救急受診への障壁となり,再灌流時間や死亡率に影響を与える可能性がある.本研究でCOVID-19がST上昇型急性心筋梗塞患者の30日死亡率および再灌流時間に与えた影響を調べた.
方法:2019年1月から2021年6月に経皮的冠動脈インターベンションを行ったST上昇型急性心筋梗塞患者274人を対象とし,WHOがCOVID-19の流行を宣言した2020年3月11日以降に入院した121人(post-COVID-19群)と2020年3月10日以前に入院した153人(pre-COVID-19群)に分類した.主要評価項目は,発症から再灌流までの時間(onset to balloon time),30日以内の全死亡として2群間での比較検討を行った.
結果:onset to balloon timeはpost-COVID-19群で有意に延長していた(220 min vs 314 min,p=0.005)が,30日以内の全死亡は有意差を認めなかった(9.2% vs 7.4%,p=0.61).
結論:COVID-19は救急受診の遅れにより再灌流時間を延長させたが,短期死亡率に影響を与えなかった.
抄録全体を表示