心臓
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選択された号の論文の16件中1~16を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection 循環器領域におけるCT新時代 企画:船橋 伸禎(国際医療福祉大学医学部市川病院)・上原 雅恵(がん研究会有明病院 腫瘍循環器)
HEART’s Up To Date
[臨床研究]
  • 辺 泰樹, 井口 信雄, 廣川 愛美, 高良 綾子, 薄井 秀美, 上田 みどり
    2024 年 56 巻 4 号 p. 368-375
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル フリー

     背景:生体モニターとして心拍数の不規則性から心房細動を検出するアップルウォッチ(AW)が,臨床的に有用であることはすでに報告されている.さらにAWを使って心電図を記録することが,2021年より本邦でも可能となっている.また近年では,このAWの心電図記録機能を利用して,体表面標準12誘導心電図に似た波形が記録可能であることが報告されている.本研究では,循環器外来患者におけるAWを使った多誘導心電図記録の有用性について検討した.
     方法と結果:2021年2月から2021年5月まで榊原記念クリニックの外来を受診された患者で,体表面12誘導心電図記録後にApple watch series 6を使い多誘導心電図記録を行った4症例について,その波形を比較検討した.外来診察時に,同一の患者に体表面12誘導心電図とAWによる多誘導心電図を記録した.AWによる多誘導心電図を記録することで以下のような診断が可能となった.1)心房粗細動の細動波や粗動波がAWでの多誘導心電図記録により明瞭化した.2)AWで検出が不可能な高心拍数の心房細動も,心電図記録機能で診断可能であった.3)誤って洞調律と診断された規則正しいRR間隔を呈した心房粗動を,AWの心電図波形から診断できた.4)急性心筋梗塞患者におけるST上昇と対側性のST低下の所見を,AWによる心電図からも認識可能であった.
     結論:AWを使った心電図の多誘導記録は循環器外来の実臨床において有用と思われた.

[Editorial Comment]
[臨床研究]
  • 上原 拓樹, 市川 貴也, 小山内 利晶, 大江 勇太郎, 吉村 喬樹, 郡司 尚玲, 奥山 道記
    2024 年 56 巻 4 号 p. 377-384
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル フリー

     背景:循環器内科において,冠動脈造影はすべてのカテーテル検査ならびにカテーテル治療の基礎になるともいえる.しかし体系的な指導方法は確立しておらず,専用シミュレーターは非常に高額である.
     対象と方法:2022年7月から2023年6月までの1年間に循環器内科をローテーションし,本研究に賛同を得た14人の初期研修医を対象とし,動画を用いた座学と手製の簡易シミュレーターを用いた実技訓練を実施した.その後,穿刺からシース挿入,左冠動脈造影,右冠動脈造影に分けて手技の成否と手技時間を計測した.
     結果:全冠動脈造影76件中,除外基準に該当しなかった合計68件の調査を行い,そのうちシース挿入から両冠動脈造影まで一人で完遂できた症例は57件(83.8%)であった.シース挿入の成功件数は58/68件(85.3%),左冠動脈造影の成功件数は63/68件(92.6%),右冠動脈造影の成功件数は63/68件(92.6%)であった.合併症は1件(1.5%)に確認されたが重篤な合併症は認めなかった.完遂症例での手技時間について,中央値は23(19-30)分であった.1年目研修医と2年目研修医でそれぞれ比較したところ,手技完遂率は86.5%と75.0%(p=0.272),完遂例の手技時間は24(20-30)分と20(17-25)分(p=0.090)であり,1年目研修医のほうが時間を要している一方で手技完遂率が高い傾向がみられたが,統計学的有意差はみられなかった.
     結語:動画と簡易シミュレーターを用いた冠動脈造影の指導は,簡便でどの施設でも実施可能であり,安全でかつ初回から高い遂行率を示すことができた.

[症例]
  • 中西 准, 川村 豪嗣, 林 健太郎, 津久井 良昌, 多田 雅博, 八戸 大輔, 堀田 怜, 藤田 勉
    2024 年 56 巻 4 号 p. 385-390
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル フリー

     重症大動脈弁狭窄症(AS)の治療法として,経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)が広く普及している.TAVIは外科的大動脈弁置換術(SAVR)と比較して低侵襲であり,超高齢者にも施行可能であるが,重篤な合併症を起こす可能性がある.今回,我々は生体弁留置前のバルーン大動脈弁形成術(BAV)により生じた重症大動脈弁閉鎖不全症(AR)による心原性ショックを経験した.症例は80歳台女性.症候性の重症ASと診断され,局所麻酔下鎮静法によるTAVIの方針となった.生体弁留置前のBAV直後より,カテコラミン抵抗性のショック状態となった.経胸壁心エコー図検査(TTE)ではARは判然としなかったが,tetheringによる重症僧帽弁閉鎖不全症(MR)を認めた.V-A ECMOを確立するも,循環動態は改善を認めなかった.経食道心エコー図検査を施行すると大動脈弁弁尖の逸脱を認め,massive ARによる心原性ショック,tethering MRと診断できた.その後,自己拡張型生体弁を留置し,血行動態は安定した.BAV後の急性重症ARはTTEでの評価が困難な場合があることをハートチーム全員が把握しておく必要がある.また,迅速な生体弁の留置が血行動態改善への鍵である.合併症の発生時,麻酔科医は全身麻酔への移行とTEEでの評価を常に考慮する必要性がある.

[症例]
  • 村田 憲郁, 和田 匡史, 齋藤 宇亮, 松尾 啓太, 越智 正彦, 高山 伸, 村田 有里恵, 赤井 弘明, 小出 祐嗣, 大塚 寛昭, ...
    2024 年 56 巻 4 号 p. 391-396
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル フリー

     心尖部肥大型心筋症を有しICD植込みされている77歳男性.非持続性心室頻拍に対し5年前よりアミオダロン100 mg内服を開始.過去に心原性脳塞栓症を発症しており,心室内血栓の疑いがあったためワルファリンにて抗凝固治療が行われていた.今回,血痰と呼吸困難を主訴に当院に救急搬送となった.CT検査にて両側肺野に広範囲網状浸潤陰影を認め,肺胞出血と診断して非侵襲的陽圧換気(NPPV)を開始した.来院時PT-INR 4.58と延長しており,肺胞出血の原因と考えられたため,静注用人プロトロンビン複合体製剤でワルファリンを拮抗し,かつアミオダロンは肺胞出血の原因となる可能性を考えて中止とした.しかし,PT-INR正常化維持にもかかわらず,第3病日に呼吸不全が急速に進行し肺陰影も増強したため,アミオダロンによる薬剤性肺胞出血を疑いステロイドパルス療法を行ったところ,呼吸状態が著明に改善.ステロイドが奏功しNPPV離脱に成功した.
     アミオダロンによる薬剤性肺障害としては間質性肺炎が頻度も高く一般的とされるが,極めて稀に肺胞出血をきたしうると報告されている.本症例は肺胞出血の病因が抗凝固治療のみでは説明困難な経過であり原因診断に難渋したが,薬剤性以外の病因をすべて除外し,かつステロイドへの反応性からアミオダロンによる薬剤性肺障害としての肺胞出血と考えられた.

[Editorial Comment]
[症例]
  • 川村 豪嗣, 林 健太郎, 津久井 良昌, 多田 雅博, 中西 准, 辻 麻衣子, 竹内 優子, 八戸 大輔, 士反 英昌, 堀田 怜, 大 ...
    2024 年 56 巻 4 号 p. 398-403
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル フリー

     症例は38歳の女性で,心疾患として拡張型心筋症または頻脈誘発性心筋症(tachycardia-induced cardiomyopathy)の疑いによる慢性心不全およびうつ病の既往があった.ロラゼパム,ビソプロロール,メキシレチンの大量服用後に近医受診した.待合室で心肺停止となり,心肺蘇生後に当院へ転院搬送となった.当院搬送直後,心静止となったが,心肺蘇生後すぐに心拍再開が得られた.ICU入室後,心エコーにて左室駆出率の著明な低下を確認した.カテコラミンへの反応は乏しく,収縮期血圧は60-70 mmHgで推移したため,薬物治療抵抗性の心原性ショックに対し,経皮的心肺補助装置(VA-ECMO)とIMPELLA CPを併用するECPELLAを導入した.ECPELLA開始直後,薬剤性QT延長症候群をきっかけとする心室細動を繰り返したが,5日目にVA-ECMO,6日目にIMPELLAを離脱し,7日目に人工呼吸器から離脱した.既往のうつ病に対しての慎重な向精神薬の調整,また環境の調整目的で入院11日目に他院転院となった.

[症例]
  • 曽根 晴人, 北本 昌平, 山下 洋一, 中川 さや子, 堀井 泰浩
    2024 年 56 巻 4 号 p. 404-411
    発行日: 2024/04/15
    公開日: 2025/04/18
    ジャーナル フリー

     心臓血管外科手術では,コントロール困難な出血に対して,遺伝子組換え活性型第・因子製剤であるノボセブン®の投与を考慮する場合がある.症例は78歳男性,心房性機能性TR・MRによる治療抵抗性心不全と診断され,手術の方針となった.弁形成術,右房縫縮Maze術を行い,止血確認し手術終了したが,ICU入室後より800 mL/hr以上の大量のドレーン出血を認めた.計3回の再開胸を繰り返したが,明らかな外科的出血点を認めなかった.RBC 52単位,FFP 86単位,PC 100単位の補充で血液・凝固検査値は基準値まで補正されたが,出血が持続したため,ノボセブン®を合計100 μg/kg投与したところ出血量は急速に減少し,血栓塞栓症等の合併症なく回復した.今回,弁膜症術後の持続する出血に対してノボセブン®が奏効した1例を経験したため報告する.

[Editorial Comment]
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