心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
最新号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
OpenHEART
企画:島田悠一(ニューヨーク・コロンビア大学病院 循環器内科 肥大型心筋症センター)
HEART’s Column
HEART’s Up To Date
[臨床研究]
  • 名古路 貴志, 野木 一孝, 花房 龍太郎, 杉浦 純一, 信田 紗希, 経堂 篤史, 中村 卓也, 橋本 行弘, 上田 友哉, 渡邉 真言 ...
    2023 年 55 巻 9 号 p. 890-896
    発行日: 2023/09/15
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー
     背景:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は急性心筋梗塞患者の救急受診への障壁となり,再灌流時間や死亡率に影響を与える可能性がある.本研究でCOVID-19がST上昇型急性心筋梗塞患者の30日死亡率および再灌流時間に与えた影響を調べた.
     方法:2019年1月から2021年6月に経皮的冠動脈インターベンションを行ったST上昇型急性心筋梗塞患者274人を対象とし,WHOがCOVID-19の流行を宣言した2020年3月11日以降に入院した121人(post-COVID-19群)と2020年3月10日以前に入院した153人(pre-COVID-19群)に分類した.主要評価項目は,発症から再灌流までの時間(onset to balloon time),30日以内の全死亡として2群間での比較検討を行った.
     結果:onset to balloon timeはpost-COVID-19群で有意に延長していた(220 min vs 314 min,p=0.005)が,30日以内の全死亡は有意差を認めなかった(9.2% vs 7.4%,p=0.61).
     結論:COVID-19は救急受診の遅れにより再灌流時間を延長させたが,短期死亡率に影響を与えなかった.
[Editorial Comment]
[Editorial Comment]
[症例]
  • 村山 剛大, 豊川 建二, 操 強志, 大井 正臣, 吉重 祐介, 川畑 和代, 鹿島 克郎, 曽我 欣治
    2023 年 55 巻 9 号 p. 900-906
    発行日: 2023/09/15
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー
     症例は65歳,男性.高血圧症,脂質異常症で外来治療を受けていたが,農作業中に突然,前胸部痛が出現し当院へ救急搬送された.造影CT検査で鎖骨下動脈末梢から右総腸骨動脈まで偽腔開存型解離を認めたが,画像および採血を含む検査所見から臓器虚血および破裂所見を認めなかったためuncomplicated B型解離と診断し,安静・降圧管理の方針とした.第8病日,歩行訓練中,左大腿部のしびれ感と感覚低下を訴えたため下肢虚血を疑い左足関節上腕動脈血圧比(ABPI)を測定したが,0.88と正常範囲内であった.造影CT検査上,大動脈解離所見に変化はなく,下肢MRA検査上も狭窄所見を認めなかったが,その後も歩行時の左下肢違和感が持続した.第15病日,エルゴメーター運動負荷時,2.3 METSで左下肢の違和感が出現し,下肢血圧が測定不能となった.右ABPIは運動負荷で変化がなかった.9分間の安静で,下肢症状は改善し左ABPIは運動負荷前まで改善した.大動脈レベルにおける真腔圧迫が原因で生じるdynamic obstructionと判断しTEVAR(thoracic endovascular aortic repair)を施行した.術後,歩行時の左下肢違和感は消失し,エルゴメーター運動負荷ABPIで低下を認めなかった.
     保存的治療が適応となるuncomplicated B型解離においても運動負荷で下肢虚血症状が誘発される際には外科的治療が考慮される.本症例のように安静時ABPIで異常所見を認めずとも,エルゴメーター運動負荷ABPI検査による運動時下肢虚血の証明が重要であると考えられた.
[症例]
  • 神人 将, 木下 聡, 比嘉 建介, 平辻 知也
    2023 年 55 巻 9 号 p. 907-912
    発行日: 2023/09/15
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー
     症例は既往歴のない34歳男性.来院前日に発症した胸痛を主訴に救急外来を受診し,急性心筋梗塞の診断とされた.冠動脈造影検査を施行したところ左冠動脈前下行枝(left anterior descending artery;LAD)#7の多量血栓による完全閉塞を確認し,血栓溶解療法とバルーン拡張を施行し再灌流できた.
     入院後は腎機能の増悪を伴う3-9 L/日の多尿が持続し,入院時の血液検査で高Ca血症および低P血症を認めたことから原発性副甲状腺機能亢進症を疑い精査したところ,確定診断に至った.頸部超音波検査で甲状腺右葉下端に接して10×11×16 mm大の腫瘤を認めたため外科的に切除し,その後は腎機能および多尿は速やかに改善した.
     原発性副甲状腺機能亢進症は約50%が無症候性であり,偶発的に発見されることが多い疾患である.今回,急性心筋梗塞を発症したことを契機に判明した,原発性副甲状腺機能亢進症の1例を経験した.副甲状腺機能亢進症は急性心筋梗塞のリスクを高めることが報告されており,若干の文献的考察を加えて報告する.
[Editorial Comment]
[症例]
  • 松尾 朋峰, 吉田 圭佑, 江戸 直樹, 三石 淳之, 三浦 友二郎
    2023 年 55 巻 9 号 p. 915-921
    発行日: 2023/09/15
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は87歳の男性.1年前からの嚥下障害を主訴に近医を受診し,CT検査で偶発的に弓部大動脈瘤(TAA:thoracic arch aneurysm)を認めたため,当院に紹介となった.TAAは最大径74.5 mmの小弯縦隔側に突出する嚢状瘤で,食道造影検査で瘤による食道の圧排と通過障害を認めた.術前冠動脈造影検査で左冠動脈前下行枝の有意狭窄が指摘され,Canadian Study of Health and Aging Scaleは4であったが,認知機能や呼吸機能の低下はなく,Japan SCOREは死亡率11.4%(合併症51.8%)であった.治療は全弓部人工血管置換術+冠動脈バイパス術を施行した.術後脳神経学的合併症なく,概ね順調に回復し,食道造影検査でも通過障害は改善され,術後26日目にリハビリテーションのため転院となった.高齢患者に対するTAAの治療では,侵襲度の観点から胸部ステントグラフト内挿術も考慮されるが,瘤切除が必要な症例では開胸による全弓部人工血管置換術が第一選択となる.術後合併症回避のためには,呼吸機能や虚弱などの耐術能評価に基づいた術前からの予防的介入が肝要である.
[症例]
  • 中村 亮, 安藤 眞一, 岩本 良二, 鬼塚 健, 由布 威雄, 河野 佑貴, 生田 拓, 古澤 峻, 福山 尚哉, 杉 雄介, 門上 俊明
    2023 年 55 巻 9 号 p. 922-927
    発行日: 2023/09/15
    公開日: 2024/09/30
    ジャーナル フリー
     先天性プロテインS(PS)欠損症は常染色体優性遺伝を呈する先天性凝固異常症の一つで,若年発症の繰り返す深部静脈血栓症の原因となり,PS活性値の低下によって確定診断される.血栓症の予防のためには原則としてビタミンK拮抗剤(ワルファリン)の服薬継続が推奨されているがアドヒアランスの不良が問題となる場合がある.本症例は47歳男性,34歳時に脳矢状静脈洞血栓症にて他院に入院後ワルファリンを2年間服用していたが,以後中断.38歳時に門脈血栓症を発症し当院受診.先天性PS欠損症と診断されワルファリンを再開し軽快していたが服薬の中断後に3度目の血栓症発症.以後,アドヒアランス向上目的で直接経口抗凝固薬(DOAC)であるエドキサバン30 mg/日を開始し,再発なく経過している.生涯にわたる抗凝固療法の継続が必要な若年者の先天性凝固異常症の症例においては,アドヒアランスの向上にDOACが有用と考えられた.
日本脳卒中学会、日本循環器学会、日本心血管インターベンション治療学会
feedback
Top