症例は70歳代女性.50歳より気管支喘息があり,3カ月前より喘息の増悪,食思不振,体重減少を認め,血液検査にて著明な好酸球増多が確認されたため,精査目的に当院紹介受診となった.CTで好酸球性肺炎を疑う陰影と気管支生検にて好酸球浸潤を伴う肉芽腫が確認でき,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis;EGPA)と診断した.入院時の血液検査でトロポニンIとBNPの上昇を認め,心電図では前胸部誘導での陰性T波を認めた.心臓超音波検査では,左室前壁から心尖部にかけて壁運動低下を認め,EFは37%と低下していた.冠動脈造影検査では器質的冠動脈狭窄はなく,心筋生検にて間質への好酸球浸潤を認める所見が得られたため,EGPAに合併した好酸球性心筋炎であると診断した.ステロイドパルス療法とシクロフォスファミドによる寛解導入療法を開始し,好酸球減少と壁運動改善を認め,プレドニゾロンとメポリズマブを併用した維持療法を行い経過良好である.EGPAと診断した症例に対し,心臓スクリーニング検査を行い,心臓合併症を早期に診断・治療を開始することが重要である.
症例は60歳代男性.主訴は呼吸困難,下腿浮腫.入院の3年前に心電図異常で当科紹介受診となり,心電図で心房細動,心エコー図で僧帽弁前尖の逸脱と弁輪拡大を伴う中等度の僧帽弁逆流症(MR)を指摘された.入院1年前,労作時呼吸困難,浮腫を認め,心エコー図検査では左房拡大に伴うMRの増悪を認めた.薬物治療で症状は軽快するも,半年後に心不全が再燃したため,心房細動に対してカテーテルアブレーションを行った.その結果,洞調律となり,左房は縮小し,MRは改善した.本例は,一次性と二次性の混在したMRであったが,カテーテルアブレーションによる左房のリバースリモデリングによって僧帽弁逆流が改善したものと考えた.
60歳台,男性.高血圧治療中健康診断で心電図異常を指摘された.虚血性心疾患を疑われ,他院で冠動脈造影が行われたが有意狭窄は認めなかった.心エコー図で左室壁厚12 mmのびまん性心肥大を認めたが無症状のため経過観察となっていた.翌年労作時息切れと低血圧によるふらつきを自覚し当科へ紹介受診となった.心エコー図で左室のびまん性壁肥厚に加え,global longitudinal strain(GLS)は低下し,apical sparing patternを呈していた.左室拡張能は拘束型であった.血液検査ではNT-proBNP 1,164 pg/mL,免疫グロブリン遊離軽鎖(FLC)λ型の上昇と尿中Bence-Jones λ型M蛋白を認めた.心アミロイドーシスを疑い心筋生検を行ったところ間質にコンゴレッド染色陽性,IgGλ陽性の沈着物が検出され,AL心アミロイドーシス(IgGλ型)と診断,DCyBorD療法が開始された.本治療により血中FLCは著減し,NT-proBNP,トロポニンTも低下した.心不全症状はNYHA Ⅱ度からⅠ度へ改善した.心エコー図では左室壁肥厚は退縮し,左室拡張能は弛緩障害型へ改善した.治療開始2年でALアミロイドーシスは完全寛解と判断され,心不全の再燃なく経過観察中である.今回急速に病勢が進行したAL心アミロイドーシスに対しDCyBorD療法が,左室肥大の退縮と左室拡張能の改善に効果的であった症例を経験した.
今回,我々は左主幹部高度狭窄を呈する急性冠症候群において緊急冠動脈バイパス術を依頼され,カテーテル治療(percutaneous coronary intervention;PCI)と低侵襲冠動脈バイパス術(minimally invasive direct CAB;MIDCAB)のハイブリッド冠血行再建(hybrid coronary revascularization;HCR)にて救命した症例を経験したので報告する.症例は80歳女性,突然の胸痛を主訴に救急搬送された.3年前に正中アプローチによる僧帽弁形成+メイズ手術を施行されている.来院時は心室細動であったが蘇生し,緊急冠動脈造影で左主幹部高度狭窄を指摘され,回旋枝へのPCI+左前下行枝(left anterior descending artery;LAD)へのMIDCABによるHCRの方針とした.回旋枝,高位側壁枝へのPCI後,MIDCAB実施.術後経過良好で第18病日に独歩退院した.正中アプローチ後の再開胸手術症例に対する低侵襲アプローチは胸骨再切開,癒着剝離による手術時間延長・出血・副損傷リスクなどを回避できることが大きな利点となる.LAD以外の冠動脈同定が困難な可能性がありHCRとすることで血行再建の完遂率を向上させ,心嚢内癒着剝離も最低限とすることが可能であり,低侵襲化が可能であった.