心臓
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症例
運動負荷試験中に著明なST上昇をきたした狭心症の2症例
小路 裕伊藤 茂樹天谷 和貴雨宮 正内山 裕智橋本 雅史市橋 弘章末定 弘行
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2009 年 41 巻 10 号 p. 1112-1118

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抄録

今回, 運動負荷試験施行中に著明なST上昇を認め, 確定診断を得た狭心症の2症例を経験した.
症例1: 63歳, 男性. ヘビースモーカーで, 高血圧は未治療であった. 安静時, 労作時を問わず胸部圧迫感を自覚するために外来にて運動負荷試験を行ったところBruce Stage III 1分よりV1~4でST上昇を認めた. 同日, 緊急冠動脈造影検査を施行したが有意な冠動脈狭窄を認めなかった. 引き続きアセチルコリン負荷を行ったところ胸痛を自覚するとともに左冠動脈に著明な攣縮を認め, 冠攣縮性狭心症と診断した.
症例2: 71歳, 男性. 高血圧, 糖尿病を指摘されていたが未治療であった. 労作時の胸部圧迫感を主訴に来院し, 運動負荷試験を行ったところBruce Stage III 1分より胸痛出現し, V1~4にてST上昇を認め同日緊急入院となった. 冠動脈造影検査の結果, 左前下行枝および左回旋枝に有意狭窄を認め同部位に対して経皮的冠動脈形成術を行いステント留置した.
これらの症例は負荷試験の最中に心室性不整脈を発症する可能性が高く注意が必要である. また, 症例1は冠動脈に有意狭窄を認めず, 運動負荷試験が診断に有用であった.

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© 2009 公益財団法人 日本心臓財団
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