心臓
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症例
心膜原発と考えられた原発性体腔性リンパ腫の1例
濵 知明山崎 佐枝子神吉 雄一酒井 龍一茅野 千春渡辺 秀彦田村 泰夫大和 眞史中村 智次塩原 信太郎
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2009 年 41 巻 10 号 p. 1143-1148

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抄録

82歳, 男性. 2年前に急性冠症候群. その後, 心不全のため入院を繰り返していた. 2008年5月上旬から体重増加, 食欲不振, 心窩部痛, 腹部膨満感が出現した. 胸部単純X線検査にて心拡大が見られたため, 当院入院. 入院時, 体重55.2kg(前回退院時は51kg), 血圧182/102mmHg, 脈拍74/分・整, 体温36.8℃, SpO2=97%(room air). 呼吸苦なし, 頸静脈怒脹なし, 表在リンパ節触知せず. 心音異常なし, 心雑音なし. 肝脾触れず, 下腿浮腫軽度. 生化学検査にて軽度貧血, 肝腎機能低下を認め, LDH 268 IU/L, 可溶性IL-2R 2,870 U/mL. 心臓超音波検査にて, 心嚢内に全周性に心嚢液を認め, 拡張能低下が認められた. 当初は心不全による心嚢液貯留と考え, カルペリチド, 利尿薬を使用した. しかし, 心嚢液は不変であった. そこで, 心嚢ドレナージを施行し淡血性の心嚢液1,000mL吸引したところ, 尿量増加し, 下腿浮腫も改善した. 心嚢液から結核菌を含む細菌は認められず. 細胞診にてClass IVの細胞が検出され, 心嚢液のセルブロックからび漫性巨細胞性B細胞性リンパ腫と診断された. 全身のCT, Gaシンチグラフィ, PET, 骨髄穿刺・生検では異常集積や異型細胞は認められなかった. 以上から心膜に限局したび漫性巨細胞性B細胞性リンパ腫と診断した.

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© 2009 公益財団法人 日本心臓財団
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