心臓
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症例
持続性心房細動の経過中に偽性心室頻拍が出現し, うっ血性心不全を生じたWPW症候群の1例
太田 昌樹金古 善明中島 忠齋藤 章宏入江 忠信加藤 寿光飯島 貴史間仁田 守伊藤 敏夫秋山 昌洋倉林 正彦
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2009 年 41 巻 10 号 p. 1157-1163

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抄録

症例は64歳, 男性. 2007年7月うっ血性心不全(congestive heart failure; CHF)発症, narrow QRSの持続性心房細動(atrial fibrillation; AF)にwide QRS頻拍が混在していた. その9年前に正常洞調律で左室駆出率(left ventricular ejection fraction; LVEF) 64%と正常であった. CHF軽快後は, narrow QRSのAFとなっていた. 同年11月, CHF再発した. この時は, narrow QRS心拍を認めず140/分のRR間隔の不規則なwide QRS頻拍が持続していた. このwide QRS頻拍はベラパミルにて頻拍化, ATPにて不変, ピルジカイニドにて消失した. 左室壁運動は全周性に低下しLVEFは29%で, 正常冠動脈, 心筋生検, 心筋シンチグラフィは正常であった. 電気的除細動後にはデルタ波を認め, wide QRS頻拍は消失した. 心房刺激時のQRS波形は, wide QRS頻拍と同一波形であった. 右後中隔に順伝導のみ有する副伝導路(accessory pathway; AP)を認め, アブレーションにて離断した. 3カ月後にはLVEF 61%と改善した. 本例は, AFの経過中にAPの順伝導性が一過性に出現し偽性心室頻拍を呈した稀なWPW症候群(Wolff-Parkinson-White syndrome)で, それに伴いうっ血性心不全を生じた興味ある症例である. 左心機能低下の成因として, 頻脈化そのものによる頻拍誘発心筋症の惹起および後中隔からの早期興奮による心室非同期収縮が持続的に生じたためと考えられた.

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© 2009 公益財団法人 日本心臓財団
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