2009 年 41 巻 9 号 p. 1062-1065
症例は62歳, 女性. 失神発作を伴う洞機能不全症候群に対して1998年12月にDDDペースメーカー植え込みが行われた. 術後の経過は良好であったが, 1999年3月になりペースメーカーポケット部の腫脹が出現した. 外来にて2度穿刺排液を行ったところ, いずれも漿液性で細菌培養は陰性であった. その後状態は落ち着いていたが, 1999年7月に熱感を伴うポケット部の発赤腫脹が出現した. 繰り返すポケット部トラブルの原因として金属アレルギーの関与を疑い, 入院のうえpolytetrafluoroethyleneシート(ゴアテックスシート)による被覆を併用してジェネレーター交換を行った. その後外来にて経過をみていたが, 2006年12月に再びポケット部の発赤腫脹が出現した. 2007年1月に待機的にポケット部開放を行ったところ, ゴアテックスシート内に多量の膿を認め, 細菌培養の結果Staph capitis subspecies capitisが確認された. ポケット部はそのまま開放とし, 一時的ペースメーカーを装着して治療を継続した. 炎症所見消失およびポケット部の培養陰性化を確認後に, ポケット部閉鎖および胸部反対側にペースメーカー植え込みを行った. 術後の経過は良好で, 再感染の徴候なく退院させることができた. 今回われわれは金属アレルギーが疑われゴアテックスシート併用下にペースメーカー植え込みを行い, 7年後にポケット感染を起こした1例を経験した. 金属アレルギー症例において, しばしばゴアテックスシートが用いられるが, 遠隔期にも注意が必要である.