心臓
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症例
冠攣縮により心室細動をきたし家人による心肺蘇生,救急隊による自動体外除細動器により救命できた1例
名取 俊介小川 晋平野村 智昭芳賀 智顕羽根田 俊ターリブ アリー坂本 央竹内 利治長谷部 直幸
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2010 年 42 巻 6 号 p. 807-812

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抄録

症例は63歳,男性.高血圧,高尿酸血症にて近医通院中だったが内服中のカルシウム拮抗薬を数日間自己中断していた.2009年3月上旬,12時30分ころから前胸部痛が出現し近医を受診した.13時ころ心電図記録中にST上昇とともに心肺停止状態となり,そばに付き添っていた元看護師の妻が心臓マッサージを開始,救急隊到着時の意識状態はJCS III-300,自発呼吸はなかった.自動体外除細動器で心室細動を確認しDC360J×1回で除細動され心拍再開後,前医に搬送された.13時20分,前医到着時は意識清明,自発呼吸も回復しており,心電図のST上昇も消失していた.冠攣縮性狭心症,致死性不整脈疑いで当院に再搬送された.硝酸薬の点滴,カルシウム拮抗薬再開で入院経過中に胸痛発作はなく不整脈も出現しなかった.内服継続下での冠動脈造影,アセチルコリン負荷試験,心室頻拍誘発試験はいずれも陰性であり,植込み型除細動器の植え込みは見送った.冠攣縮自然発作の心電図記録直後に心肺停止となり,bystander(救急現場に居合わせた人)による心肺蘇生と,救急隊による除細動の連携により合併症なく,心室細動から蘇生した稀な症例である.

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© 2010 公益財団法人 日本心臓財団
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