2010 年 42 巻 SUPPL.2 号 p. S2_190-S2_196
症例は64歳, 男性, 元パイロット. 早朝, 自宅で倒れているところを家人が発見し, 心肺蘇生を開始した. 救急車内でのモニター心電図で心室細動を認めた. 除細動1回で心室細動は停止し当院へ搬送された. 来院時心電図では異常所見を認めず, 心エコー図はび漫性に左室駆出率は30%と低下していたが, その後回復した. 冠動脈造影では器質的な有意狭窄, 冠攣縮を認めなかったが, 右冠動脈が左バルサルバ洞に開口している所見を認めた. 冠動脈CTでは右冠動脈が大動脈と肺動脈基部の間を走行しており, アデノシン負荷心筋血流シンチグラフィでは右冠動脈領域に再分布像を認めた. 電気生理学的検査, ピルジカイニド負荷では異常所見を認めなかった. 植込み型除細動器植え込み術を施行し退院した. 今回, 右冠動脈起始異常により心室細動をきたした症例を経験した. 本症例は60歳まで運動負荷検査を毎年施行していたが, 本疾患を事前に予測することはできず, 貴重な症例と考えられ報告する.