2011 年 43 巻 7 号 p. 891-895
症例は, 40歳, 男性. マルファン症候群と診断されており, 32歳時にB型大動脈解離を発症し, 降圧治療を施行されていた. 38歳時にA型大動脈解離を発症したため, 他院で大動脈基部置換術と弓部大動脈置換術が施行された. この時の再解離で左鎖骨下動脈以下の大血管が三腔解離となり, その後, 拡大傾向を認めるようになったために, 手術適応となった.
手術は, 前回手術の末梢吻合部が食道と癒着していたために, 左開胸での超低体温循環停止, 高本法による逆行性脳灌流を用いたopen proximal anastomosis法で中枢側吻合を行った. また, 脊髄を保護のため, 術前に同定されていた責任肋間動脈に対し選択的肋間動脈灌流を施行した. 肋間動脈および腹部分枝動脈を再建して, 左右の総腸骨動脈までのCrawford IIの範囲で人工血管置換を行った. 術後経過は順調で合併症なく術後19日目に自宅退院となった.
三腔解離を伴うマルファン症候群の胸腹部大動脈瘤の1例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する.