心臓
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症例
術前よりIABPを計画的に駆動し合併症を回避し得た, 高度脳血管障害を伴った大動脈弁閉鎖不全症および閉塞性動脈硬化症を伴った不安定狭心症の2手術例
森下 篤富岡 秀行片平 誠一郎星野 健
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2011 年 43 巻 9 号 p. 1223-1227

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抄録
高度脳血管障害を伴った大動脈弁閉鎖不全症(aortic regurgitation; AR) , 閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans; ASO) を伴った不安定狭心症に対し, 術前より大動脈内バルーンパンピング(intra aortic balloon pumping; IABP) を挿入し, 安全に手術を施行した2例を経験した.
症例1: 右冠動脈への経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI) 後, 経過観察中, 脳梗塞と心不全を同時期に発症した. 急性期脳血管リハビリを行うも, 重症ARによる心不全の増悪により大動脈弁置換術の方針となった. 左総頸動脈完全閉塞および左脳半球の血流低下もあり人工心肺中の脳合併症予防のためIABPによる拍動流が必要と考えられた. ASOも合併していたため術中の経食道心エコー法(transesophageal echocardiography; TEE)による挿入は危険と考えられ, 術前に血管撮影室にてIABPを挿入後1: 8のアシスト比で駆動させ人工心肺中は80回/分の固定駆動を行い, 脳合併症の予防を行った.
症例2: 脳梗塞のリハビリ中に胸痛が出現, 冠動脈造影にて左主幹部病変と判明, 左総腸骨動脈完全閉塞, 右外腸骨動脈狭窄も判明し, 腎機能低下も認めたため, PCIは困難と考えられ外科治療の方針となった. はじめに右外腸骨動脈にPPIを施行しstent内腔からIABPを挿入し, 血行動態を安定させ, 冠動脈バイパス術後直ちにIABPを抜去し下肢の血行再建を同時に施行した. ASOに対する治療を先行させ安全にIABPを挿入できたことは, 虚血心筋の保護と術中脳合併症の予防に有用であった.
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© 2011 公益財団法人 日本心臓財団
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