症例は53歳, 男性. フィットネスジムでジョギング中に心肺停止となり, インストラクターによるバイスタンダー心肺蘇生法(CPR), 自動体外式除細動器(AED)にて蘇生され, 当院救命救急センターに搬送された. AEDの解析結果では, 心室細動(VF)に対して除細動が作動した後, 完全房室ブロックを経て洞調律に復帰した記録を認めた. 冠動脈に有意狭窄なく, アセチルコリン(ACh)負荷試験にて左前下行枝起始部に攣縮を認め冠攣縮性狭心症と診断した. 本例は, 突然死の家族歴があり, 心臓MRIにおいてガドリニウム(Gd)遅延造影効果を認めたため冠攣縮以外の不整脈原性基質の存在を否定し得ず, 植込み型除細動器(ICD)の植込みを行った.
VFを契機に発症した冠攣縮性狭心症では, VFの原因が冠攣縮によるものとは限らず, ICDの適応に関しては, 冠拡張薬の有効性に加え, 心筋症などの冠攣縮以外の不整脈原性基質を考慮することも重要である. 当院で経験した類似症例7例の臨床経過を含め, 冠攣縮性狭心症を有するがそのほかの不整脈原性基質が否定できない症例に対するICDの適応に関して考察した.