心臓
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第23回 心臓性急死研究会
WPW症候群とearly repolarization syndromeを合併した特発性心室細動の1例
高橋 尚彦篠原 徹二脇坂 収岡田 憲広油布 邦夫原 政英中川 幹子犀川 哲典
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2011 年 43 巻 SUPPL.2 号 p. S2_38

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抄録

症例: 39歳, 男性. 以前からWPW症候群(間欠性)を指摘されていた. 2007年7月, 入浴後ソファーに座っていたところ失神し, 7分後に救急隊が到着, 心室細動を確認し数回の自動体外式除細動器で除細動できた. その後はデルタ波を認めず, 回復を待って心臓電気生理学的検査を施行した. 僧帽弁輪後壁に逆行伝導のみを示す副伝導路(不応期: 340ms)が存在しアブレーションで離断した. 心室頻拍/心室細動は誘発されなかった. 冠攣縮誘発も陰性であった. 当初, WPW症候群に合併した発作性心房細動からの心室細動が想定された. しかし副伝導路の順行伝導は弱く, 以前(2007年2月)のデルタ波のない心電図で, V1~V3のST上昇, およびII, III, aVFのJ波を伴うST上昇を認め, これらの波形には日差変動も認められたため, 早期再分極症候群(early repolariza-tion syndrome; ERS)による特発性心室細動の可能性が高いと判断した. デルタ波を伴う心電図には, II, III, aVFのJ波はなく, 逆にV3~V6で顕著なJ波を認めた. 植込み型除細動器植え込みを行い, 無投薬で現在まで心室細動は生じていない. WPW症候群とERSの合併は稀で心電図所見も興味深く, 貴重な症例と考え報告する.

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© 2011 公益財団法人 日本心臓財団
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