心臓
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症例
ナイチノール性自己拡張型ステント留置術が有効であった動脈性胸郭出口症候群の1例
槇田 俊生川島 理阿部 秀樹出羽 和
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2012 年 44 巻 11 号 p. 1380-1386

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抄録

症例は61歳,男性.2008年11月より,左上肢挙上位における跛行症状を自覚していた.かかりつけ医を受診し左鎖骨近傍の血管性雑音を指摘され,精査目的に2011年10月当院へ紹介となった.来院時は,左上肢でwright testが陽性であり,上肢挙上位においては,左側のみ1分間以上の連続した手指開閉運動が困難であった.造影CTでは,左鎖骨下動脈の血流障害は認めず,鎖骨,第1肋骨など骨格系の異常も認めなかった.選択的左鎖骨下動脈造影を行ったところ,左肩関節過外転位における撮影にて,肋鎖間隙部で左鎖骨下動脈が完全閉塞となる所見が得られた.動脈性胸郭出口症候群の診断で,本人,家族と治療方針について検討し,血管内治療の方針で承諾を得た.左橈骨動脈よりアプローチし,左鎖骨下動脈に対して肋鎖間隙部をまたぐようにナイチノール性自己拡張型ステントを留置したところ,左肩関節過外転位においても左鎖骨下動脈の血流を維持することに成功した.術後は,上肢挙上位における左上肢の跛行症状は消失し,アスピリン,クロピドグレルを継続として術後第4病日に退院した.今回われわれは,骨格系に異常のない中年男性に発症した動脈性胸郭出口症候群に対し,橈骨動脈アプローチによる低侵襲な血管内治療が有効であったので報告する.

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© 2012 公益財団法人 日本心臓財団
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