2012 年 44 巻 12 号 p. 1593-1598
睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing;SDB)が,心不全患者の治療ターゲットとして注目されている.これまで,心不全に伴うSDBに対する治療デバイスとして持続性陽圧(continuous positive airway pressure;CPAP),2相性気道陽圧(Bi-level PAP)が用いられてきたが,胸腔内圧の上昇,忍容性の低さが問題点であった.最近,患者の呼吸に同調して陽圧を与え,患者の換気量を確保しながら,自動的にサポート圧を調節する順応性自動制御換気装置(adaptive servo ventilation;ASV)が慢性心不全患者に使用され,低心機能を改善し,患者のコンプライアンスを向上させることが明らかとなり,本邦で多くの患者に使用されている.さらに,ASVはSDBを合併した慢性心不全患者の予後を改善させることはもちろんのこと,SDBが少ない患者にも効果を発揮する可能性があることが理解され始めている.言い換えると,ASVはSDBの重症度によらず慢性心不全患者の予後を改善する可能性がある.ASVが有する直接的血行動態改善作用や異常呼吸抑制効果が,慢性心不全患者に有益な結果をもたらすことが予想されている.今後,慢性心不全に対するASVの有効性や予後改善効果に関して多くの研究が待ち望まれている.