心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
臨床研究
当院における下大静脈フィルター留置の治療成績
橋本 哲也塚本 正樹今井 幹昌櫻木 奈央中川 裕介浅田 聡阪本 健三
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 44 巻 6 号 p. 677-682

詳細
抄録

下大静脈フィルター(inferior vena cava; IVC)は, 深部静脈血栓症(deep venous thrombosis; DVT)の急性期, および慢性期に肺塞栓症を予防するため, 臨床的に使用されているが, その適応については慎重に考慮する必要がある. 今回, 当院で下大静脈フィルターを留置した症例を後ろ向きに追跡調査した. 症例は, 2003年1月から2010年12月までに当院で下大静脈フィルターを留置した連続70症例のうち追跡可能であった52症例(永久留置39例, 非永久留置13例) で, 平均観察期間は33カ月であった. 抗凝固療法が継続されていた症例は, 全体の30例(58%), 永久留置例のうち25例(64%), 非永久留置症例のうち5例(38%)であった. フィルター留置に関連した死亡はなく, 肺塞栓再発もみられなかった. 永久留置例のうち2例でフィルターによる無症候の静脈穿孔が認められ, 1例で抗凝固療法中止後にDVT再発がみられたが, 抗凝固療法再開により消失した. 非永久留置例では合併症は認めなかった. 今回の短期間の検討では, フィルター永久留置症例において重篤な合併症はみられなかったが, 長期にわたる経過観察が必要と考えられた. また, 永久留置の場合, 抗凝固療法の継続によりDVTの再発を減少させることができる可能性があると考えられた.

著者関連情報
© 2013 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top