抄録
54歳,女性.主訴は前胸部痛.既往歴にバセドウ病,好酸球性筋膜炎.息子の介護中に冷汗を伴う突然の前胸部痛を自覚し救急搬送された.広範囲前壁急性心筋梗塞と診断され,緊急冠動脈造影の結果,3枝病変および左主幹部に高度狭窄 (99%)を認めた.心原性ショックを呈したため大動脈内バルーンパンピング (intra-aortic balloon pumping;IABP)の挿入後に責任病変と考えられた左主幹部にステントを留置した.人工呼吸管理およびドパミン,ドブタミン,ミルリノンの併用による心不全治療を継続したがIABPの離脱に難渋した.第71病日,冠動脈は動脈硬化のためいずれも小径血管であったが,3枝に残存していた狭窄病変をそれぞれ血行再建した.心不全はその後コントロールされ,第138病日の8回目の試行にてIABPの離脱に成功し,第161病日,リハビリテーション目的に転院となった.長期のIABP管理を要した薬物治療抵抗性心不全に対し,残存病変に対する血行再建後に血行動態が安定しIABPの離脱に成功した左主幹部急性心筋梗塞の1例を報告する.