抄録
症例は29歳,男性.両大血管右室起始症の診断で小児期に修正Fontan術(右房-右肺動脈吻合および右房内心房中隔造成術)が行われた.突然に動悸を自覚し,当院救急外来を受診した.心電図でwide QRS tachycardiaが認められ,左脚ブロックに伴った上室頻拍と診断された.頻拍の治療目的でカテーテルアブレーションが施行された.EnSiteNavXシステムで頻拍回路を同定したところ,心房を分離させたパッチ周囲を時計方向に旋回するリエントリー性心房頻拍(AT)と診断された.当初,ATは電気刺激で停止可能であったが,次第に停止不能となり,electrical(AT)stormの状態に陥った.頻拍の停止には電気ショックを要した.ATが持続すると血圧が60mmHg台まで低下した.鎮静薬を強化したが抑制できず,超短時間作動型β1遮断薬ランジオロールとIII群抗不整脈薬アミオダロンの点滴静注が行われた.その結果,血行動態を悪化させることなくAT stormは抑制され,危機的な状態を脱することができた.興味ある症例と思われ報告する.