2012 年 44 巻 SUPPL.3 号 p. S3_55
62歳,男性.narrow QRS頻拍の治療目的に入院.臨床的頻拍は通常型房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)で遅伝導路の焼灼により消失したが,その後の心房期外刺激で新たなlong RP’頻拍が再現性を持って誘発された.誘発時にjump up現象は伴わず,期外刺激の連結期と刺激後のreturn cycleは逆相関を示し頻拍機序としてリエントリーが疑われた.同頻拍は右室期外刺激でも室房伝導を介してVAAVパターンにより誘発されたが,頻拍中の右室単発刺激ではリセット現象は見られなかった.この頻拍はATP 3mg静注でAH間隔は不変のままAA間隔が徐々に延長した後停止した.心房最早期興奮部位は冠静脈洞入口部近傍であったが,通電による頻拍停止を繰り返しながら,徐々に冠静脈洞遠位へ移動した.最終的に入口部から約2cm遠位のfragmentationを伴う電位(-40ms)への通電で頻拍は停止し,以後誘発不能となった.AVNRTとアデノシン感受性左心房頻拍が合併した稀な例と考え報告する.