心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
症例
スパイナルドレナージ併用の胸部ステントグラフト内挿術後に急性硬膜下血腫を生じた1例
後藤 徹田崎 淳一東谷 暢也今井 逸雄塩井 哲雄丸井 晃坂田 隆造舟木 健史堀川 恭平安部倉 友宮本 享木村 剛
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 45 巻 4 号 p. 465-470

詳細
抄録

 症例は77歳, 女性. 脳梗塞の既往あり, 胸部大動脈瘤 (70mm) を指摘され当院受診した. 手術ハイリスクのためステントグラフト内挿術 (thoracic endovascular aortic repair ; TEVAR) を施行した. 術前評価にてAdamkiewicz動脈がTEVARに伴い閉塞することが明らかであり, スパイナルドレナージ (cerebrospinal fluid drainage ; CSFD) を挿入したうえで, TEVARを施行した. 外腸骨動脈の石灰化および狭窄のため大腿動脈からのTEVAR用シース挿入困難であり, 後腹膜アプローチにて総腸骨動脈からシースを挿入し, TAGステントグラフトを留置した. シース抜去時に血管壁を損傷したため, 術中から輸血を要し, 外科的に修復して閉腹した. 術後, 播種性血管内凝固症候群 (disseminated intravascular coagulation syndrome ; DIC) となり輸血を要したが, 翌日に意識混濁と右共同偏視を認め, CTで右急性硬膜下血腫を認めたため, 緊急開頭血腫除去術を施行した. 開頭術後は頭部再出血および出血による神経学的後遺症は認めず, 輸血治療によりDICは改善した. TEVAR施行後にendoleakは認めず, 術後47日目に転院となった.  TEVARによる重篤な合併症の1つに対麻痺があるが, その予防目的にCSFDは有用な手段である. 急性硬膜下血腫はCSFDの予後にかかわる重大な合併症であるが, TEVARにおけるCSFD後の急性硬膜下血腫の頻度は報告されていない. 今回われわれは, 早期発見と他科との連携により後遺症を残さず救命に成功した症例を経験したので報告する.

著者関連情報
© 2013 公益財団法人 日本心臓財団
前の記事 次の記事
feedback
Top