心臓
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症例
下大静脈フィルター抜去時期の判定に可溶性フィブリンを参考とし,良好な経過をたどった1例
高田 美穂橘 元見向原 直木平見 良一藤尾 栄起湯本 晃久水谷 靖司佐野 友美
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2013 年 45 巻 6 号 p. 701-706

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抄録
肺血栓塞栓症(pulmonary thromboembolism;PTE)および深部静脈血栓症(deep vein thrombosis;DVT)は,本邦において生活習慣の欧米化などに伴い,近年急速に増加している.妊娠時のDVTの発症率は非妊娠時と比較し5~10倍高いとの報告があり,産科領域における発症数も年々増加している.今回われわれは,妊娠36週にDVTを発症し,分娩前にPTE予防目的で一時的に下大静脈フィルターを留置し,経膣分娩後にフィルター抜去を行った症例を経験したため報告する.症例は27歳,女性.妊娠36週0日に突然の左下肢の疼痛,腫脹を自覚し,かかりつけの産婦人科を受診した.DVTによる下肢腫脹を疑われ,当院産婦人科へ緊急母体搬送となった.当院で施行された下肢静脈超音波検査にて左下肢の静脈血栓を認めたため,当科に紹介となった.直ちに抗凝固療法を開始した.入院当日,自然陣痛が発来したため,分娩に先立ち,同日下大静脈フィルターを留置し,翌日正常分娩にいたった.今回われわれは可溶性フィブリンとD-dimerを経時的に測定し,血管超音波検査と腹部造影CT検査の結果をあわせて下大静脈フィルターの抜去時期の参考にし,下大静脈フィルターを抜去した.その後の経過は良好であり,退院後もワルファリンカリウムでの抗凝固療法を継続し,慎重に外来で経過観察中である.下大静脈フィルターの抜去時期については明確な基準はないが,今回われわれは可溶性フィブリンの値の推移をフィルターの抜去時期の参考とし,良好な経過をたどった1例を経験したため報告する.
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© 2013 公益財団法人 日本心臓財団
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