心臓
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[臨床研究]
アミオダロン服用中の甲状腺機能に関する検討
藤原 雄太佐々木 翔岩倉 敏夫松岡 直樹小林 宏正日野 恵古川 裕石原 隆
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2013 年 45 巻 9 号 p. 1101-1109

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抄録

背景:アミオダロンはヨードを大量に含有するため,甲状腺機能異常をしばしば起こす.さらに末梢および下垂体でサイロキシン(thyroxin;T4)の代謝と甲状腺刺激ホルモン(thyroid stimulating hormone;TSH)分泌に影響するため,甲状腺機能の正確な解釈が困難になる.対象:2009年6月から2010年6月までにアミオダロンを1カ月以上処方されていた341名を対象とした.方法:対象患者の2003年1月から2010年6月までの甲状腺機能検査結果を調査し,また診療録より臨床的特徴を検討した.結果:測定キットの正常域では血中FT4とTSHはともに高値となり解釈不可能な異常値を呈する症例が多数あったため,両者の分布に基づき基準域を1.0≦FT4<2.4 ng/dL,1.0≦TSH<20.0 µU/mLと設定した.機能低下症例は疑いを含めて34名(10.4%)認めた.中毒症例は17名(5.2%)認め,type 1(機能亢進)例はなく,ほとんどの例がtype 2(破壊性)であった.死亡例とバセドウ病合併例を認めた.考察:アミオダロン治療中には甲状腺機能低下症も破壊性中毒症も高頻度に発症するが,軽症例では通常の正常域を用いて正確な診断を行うことは非常に難しい.アミオダロンによるT4代謝とTSH分泌への影響が大きく,甲状腺機能解釈時には従来の正常域にとらわれず本病態を考慮した特別の基準域を用いたほうが甲状腺機能を正しく評価でき,適切な対応が可能になると考えられる.

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© 2013 公益財団法人 日本心臓財団
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