心臓
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症例
僧帽弁置換術後11年を経過して再度感染性心内膜炎を発症し,疣贅による塞栓で急性心筋梗塞をきたした1例
清水勇人新保昌久勝上野修市新坂野康人Tomokazu IkemotoMasaru IchidaShuichi UenoTakaaki KatsukiArata MuraokaYasuhito SakanoKouji KawahitoYoshio MisawaKazuomi Kario
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2013 年 45 巻 9 号 p. 1132-1137

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抄録

症例は,58歳,男性.34歳の時に感染性心内膜炎を発症し,抗生物質による保存的加療を受け,この時から僧帽弁閉鎖不全を指摘されていた.46歳より心不全症状出現し,47歳(今回入院の11年前)時に当院にて僧帽弁置換術,三尖弁形成術を施行された.今回入院1 週間ほど前より夜間の発熱,咳嗽,食欲不振が持続した後,突然の胸部絞扼感が出現し当院へ救急搬送された.急性下壁梗塞と診断し,緊急心臓カテーテル治療を行ったところ,右冠動脈入口部の完全閉塞を認め,血栓吸引にて多量の赤色血栓を吸引したが,塞栓子は一部残存した.第2 病日より38℃台の発熱が持続し,第5 病日で41℃に悪化した.心臓超音波検査にて僧帽弁および大動脈弁,三尖弁に疣贅が認められ,血液培養でStreptococcus sanguisが検出されたため,心筋梗塞の原因は疣贅による塞栓と考えられた.人工弁への感染であり,保存的加療では困難と判断し,僧帽弁再置換術,大動脈弁置換術,三尖弁形成術を施行した.大動脈弁には右冠尖および左冠尖に疣贅を認め,弁組織の培養では,血液培養と同様の起炎菌が認められた.長期間をおいて繰り返し感染性心内膜炎を発症し,疣贅による塞栓で急性心筋梗塞を発症した稀な症例であり,その治療方針などについて文献的考察とともに報告する.

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© 2013 公益財団法人 日本心臓財団
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