2014 年 46 巻 1 号 p. 62-67
症例は71歳, 男性. 以前, 健診で心電図異常を指摘されたが心臓超音波検査上異常所見なく経過観察となった. 2012年1 月下旬, 4 日前より出現した胸部不快感を主訴に当院来院. 受診時, 心電図にて心拍数210/分のwide QRS tachycardiaを認めたが, 意識は清明であり, 血圧は98/50mmHgであった. 心電図より持続性心室頻拍と診断し, リドカイン, ベラパミル, アミオダロンの点滴投与を行ったが頻拍は停止せず, 電気的除細動にて停止した. しかし, その後も持続性心室頻拍を繰り返したため, 虚血性心疾患の存在も考慮し緊急冠動脈造影検査を行ったが有意狭窄は認めず, 左室造影にて心尖部心室瘤を伴う心室中部の内腔狭小化を認めた. 心室中部閉塞性肥大型心筋症に伴う心室頻拍と考えられ, ランジオロール持続投与を開始し, 再度電気的除細動を行ったところ頻拍は停止し, 以後洞調律維持が可能となった. その後, アミオダロン点滴投与から内服へ, またランジオロールはビソプロロール内服へ移行させ再発なく第27病日に軽快退院となった. 退院後14カ月経過しているが, 心室頻拍の再発は認めていない. 今回, 心尖部瘤を伴う心室中部閉塞性肥大型心筋症に合併した反復性持続性心室頻拍に対して薬物療法が効果的であった症例を経験したので報告する.