心臓
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[症例]
深部静脈および肺血栓塞栓症を合併した潰瘍性大腸炎の1例
根岸 紘子佐藤 彰彦泉田 次郎斎藤 恒儀齋藤 富善前原 和平竹石 恭知
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2014 年 46 巻 5 号 p. 600-605

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抄録

 症例は71歳男性. 潰瘍性大腸炎, 右変形性膝関節症を有し当院消化器内科と整形外科に通院中であった. 3日前より右下肢の疼痛・腫脹を自覚していた. 経過をみていたが改善しないため整形外科を受診したところ, 内科的疾患を疑われ当科へ紹介された. 当科外来にて施行された血液検査にてD-dimer等の凝固系異常, 造影CT検査にて右大腿から膝窩にかけての深部静脈血栓と両肺動脈の塞栓像が認められた. 右下肢深部静脈血栓症, 肺血栓塞栓症の診断にて同日当科に入院となった. 入院後, ヘパリン, ウロキナーゼ, ワルファリンによる抗凝固, 血栓溶解療法を開始した. 原疾患による血便増悪のため両療法が中断される可能性も考慮し肺塞栓の予防のため一時留置型下大静脈フィルターを留置した. 以後, 右下肢の疼痛軽減し腫脹も改善がみられた. 画像診断上も肺動脈血栓の消失が確認され, D-dimerも正常化したため第14病日に同フィルターを抜去した. 今回の血栓形成は潰瘍性大腸炎という炎症性疾患を基盤に有し, さらに右変形性膝関節症により右下肢の運動が制限されていた影響により血栓形成にいたったと考えられた. 入院前から潰瘍性大腸炎による粘血便を認めており, 今回の抗凝固, 抗血栓溶解療法により粘血便の軽度増加がみられるもヘパリンとウロキナーゼを減量することなく加療をすることができた.

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© 2014 公益財団法人 日本心臓財団
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