抄録
症例は16歳, 女性. 実父が冠攣縮性狭心症と診断されている. 2013年3月学校内で部活の練習後に突然心配停止となり, 当院ERに搬送された. 救急隊現着時には心室細動でありAEDが作動, 直後心停止となるも社内で自己心拍再開した. 入院後より直ちに低体温療法を導入, 復温後リハビリにて高次機能障害が徐々に改善した. 洞調律時の12誘導心電図にて前胸部誘導の陰性T波, 心エコーでは壁運動異常を認め, 心筋脂肪酸代謝シンチでは左前下行枝, 対角枝および回旋枝領域の代謝障害を呈した. 冠動脈造影にて器質性病変は指摘されないものの, アセチルコリン負荷試験では3枝に心電図変化を伴う瀰慢性の血管攣縮が誘発された. 電気生理学的検査ではVTやVFは誘発されず, ピルジカイニド負荷試験も正常であった. 以上より家族性の冠攣縮性狭心症が誘因となった若年発症のCPA症例と考えられ, 貴重な1例として報告する.