抄録
症例は49歳男性. 平成25年7月の早朝に自宅で倒れているところを家族が発見, 心室細動 (VF) を認め自動体外式徐細動器で除細動後当院に搬送された. 来院時の心電図ではBrugada型心電図を疑う所見を認め, 冠動脈造影では左冠動脈前下降枝に75%狭窄を認めた. アセチルコリン (ACh) 負荷試験で同部位の完全閉塞を認めVFを認めた. 十分な冠拡張薬を投与し後日冠動脈造影を再検したが, やはり同部位に75%狭窄を認め, 経皮的冠動脈インターベンション (PCI) を施行した. その後も心電図ではtype 1のBrugada型心電図を呈しており, PCI後に施行した心臓電気生理検査でVFが誘発され, イソプロテレノール投与下ではVFは抑制された. 本症例は器質的冠動脈狭窄に伴う冠攣縮からVFを呈したと考えられるが, その特徴的な心電図と電気生理学的特徴からBrugada症候群の因子もあると考えられ, 示唆に富む症例と考え報告する.