2015 年 47 巻 12 号 p. 1412-1418
症例は65歳女性. 持続性心房細動による急性心不全で入院した. 電気的除細動により洞調律復帰が得られ, 心不全代償化後に施行された冠動脈造影検査にて瘤形成を伴う冠動脈肺動脈瘻が認められた. 心臓カテーテル検査によるFick法では肺体血流比の増加は検出されなかった. また, 造影CT検査にて多脾症, 両側二葉肺, 膵体尾部欠損, 腸回転異常および下大静脈奇静脈結合が認められ, 本症例は嚢状動脈瘤合併冠動脈肺動脈瘻を伴った心房内臓錯位症候群と診断された. 冠動脈肺動脈瘻は冠動脈造影検査施行例の0.3~0.8%に認められ, 先天性冠動脈奇形で最も多い疾患であるが, 瘤形成の合併は0.06%と稀である. さらに, 本邦での動脈瘤合併冠動脈肺動脈瘻を伴った心房内臓錯位症候群の報告はない.
今回われわれは嚢状動脈瘤合併冠動脈肺動脈瘻を伴った心房内臓錯位症候群の1例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する.