2015 年 47 巻 12 号 p. 1429-1434
症例は69歳の女性. 進行胃癌の手術予定中に呼吸困難を自覚し近医へ緊急入院. 造影CT検査で両側肺動脈に広範な陰影欠損を認め, 急性広範型肺塞栓症と診断され当院に搬送された. 前医より抗凝固療法開始したが次第に呼吸状態が増悪し心停止に陥った. 経皮的心肺補助 (PCPS) 下にカテーテルによる血栓破砕・吸引, 局所血栓溶解療法を施行した. その後進行胃癌からの出血がコントロールできず, PCPS補助下で根治的胃切除術を施行した. 周術期にPCPS回路内に血栓形成などを合併したが, 回路交換や抗凝固療法の調整によって術後は出血および血栓性の大きな合併症は認めずPCPSを離脱, 独歩退院した. 適切な凝固管理を行うことでPCPS作動下に進行胃癌に対する根治術が可能であった急性広範型肺塞栓症の1例を経験したので報告する.