心臓
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[症例]
後天性第Ⅴ因子インヒビターによる血性心嚢液貯留および消化管出血をきたした僧帽弁狭窄症の1治験例
籏 厚三宅 陽一郎大上 賢祐田中 哲文福岡 陽子上村 由樹岡部 学
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2015 年 47 巻 12 号 p. 1436-1441

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抄録

 後天性第Ⅴ因子 (FV) インヒビターは極めて稀な疾患である. この疾患により大腸出血および血性心嚢液貯留を発症した僧帽弁狭窄症 (MS) 症例に対してFVインヒビター治療を行ったうえで人工弁置換術を施行する経験を得たので報告する. 【症例】69歳, 女性. 維持透析中, 人工肛門増設術後. 【既往歴】網膜色素変性症, 感染性心内膜炎, 大腸穿孔. 【家族歴】血液疾患を認めない. 【現病歴】僧帽弁狭窄症, 心房細動などで当院通院中. 大腸穿孔のために緊急開腹手術を施行された後に転院し維持透析を行っていたが心不全と貧血進行のため再転入院となった. 【入院後経過】ワルファリン中止, 新鮮凍結血漿, ビタミンK投与に反応しないプロトロンビン時間 (PT) および, 活性化部分トロンボプラスチン時間 (APTT) の延長が継続し, 入院第15病日に内視鏡的大腸出血止血術, 第19病日に心タンポナーデに対するドレナージ手術を施行した. 血液凝固系検査でPTおよびAPTT延長, トロンボテスト正常, FV活性は3%以下 (測定限界値以下) でcross mixing testにより短縮が認められないなどよりFVインヒビターと診断しプレドニゾロン (PSL) 投与を行った. FV活性は速やかに回復し, PSL漸減・中止後も維持されたためPSL中止後17日目に通常の人工心肺下に僧帽弁置換術を施行した. 術後経過は順調で術後20カ月の現在まで出血傾向を示すことなく経過している.

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